ホロコースト、レジスタンスもの

ヒトラー暗殺 13分の誤算 Elser 2015年ドイツ 114分   ★★

監督:オリバー・ヒルシュビーゲル、製作:ボリス・アウサラー、オリバー・シュンドラー、フレート・ブライナースドーファー
キャスト:クリスティアン・フリーデル(ゲオルク・エルザー)、カタリーナ・シュトラー(エルザ)、ブルクハルト・クラウスナー(アルトゥール・ネーベ)

1939年11月8日、ミュンヘンのビアホールで演説を行うヒトラーを狙った爆破計画。それは家具職人エルザ―の単独計画であったが、ヒトラーは裏に黒幕があると疑わず秘密警察は執拗に自白させようと拷問を続ける。戦後長いこと秘密だった暗殺未遂事件をドイツ映画らしい演出で描いた重い一作。

<ネタバレ>
冒頭で暗殺計画は失敗しエルザ―はあっさり捕まる。むごい拷問のシーンに過去の回想シーンが挟まれ物語は進んでゆく。ナチス党が政権を取り、ヒトラーの独裁が進む国内情勢がよく描かれている。というわけで戦闘シーンはない。後半時間が一気に飛び、エルザ―を拷問していた将校がヒトラー暗殺計画に加担した罪で処刑されるくだりは衝撃的。(2018/10)
ヒトラーの贋札 DIE FALSCHER/THE COUNTERFEITER   2007年 独・オーストリア  ★★   

監督:ステファン・ルツォヴィツキー、音楽:マリウス・ルーランド、キャスト:カール・マルコヴィクス、アウグスト・ディール、デーヴィト・シュトリーゾフ

ナチス・ドイツによる実際にあった「ベルンハルト作戦」。贋札によって連合国の経済を混乱させようというとんでもない作戦。ユダヤ囚人ながら、贋札作りの腕を買われ作戦のリーダーとなって働くことになった主人公。ドイツのために働くことの葛藤、サボタージュしようとする同僚とのいざこざ、役に立たない者が容赦なく殺されてゆく現実などに翻弄されながらも、とにかく生き抜いていこうとする男を描いた異色作。

<ネタバレ>

およそ主人公とは思えないようなさえないルックスのおっさん。普通の配役なら、卑屈に強いものに取り入ってずる賢く立ち回るようなタイプ。しかしただひたすらしぶとく生きることへの執念を燃やし続ける。ユダヤ人収容所だから、うまく立ち回ろうとしたって生半可な方法は通用しない。ひたすらしぶとく、耐えて耐えてゆく。そして自分の腕を信じて。作業を妨害して作戦を失敗させようとする者、それを密告しようとする者。見る人によって誰に感情移入できるかが違ってくる。
ギターとハーモニカによる哀愁漂うBGMも異色。収容所ものの悲惨さを薄めるとともに、主人公の生き様をあらわすような。あくまで映画は特殊な状況を描いているが、しゃれたエンディングもまた意外で、見る者に勇気と爽快な気分さえも持たせてくれる不思議な映画だ。(2012/5)
戦場のピアニスト  THE PIANIST 仏/独/ポー/英 2002 149分

監督: ロマン・ポランスキー、出演: エイドリアン・ブロディ、トーマス・クレッチマン、フランク・フィンレイ ★★

ユダヤ人ピアニストが捕らえられ、強制労働を経て脱出に成功するまでを描く。「シンドラーのリスト」と続けて見れば、さらにずっしりと落ち込んで、それからまた生きる勇気が湧いてくること間違いなし。

<ネタバレ>

空っぽになった町の家々一軒一軒を火炎放射器で焼き払ってゆくドイツ軍。そこまでやるかの徹底ぶり。また後半ソ連軍が迫り、退却におおわらわのドイツ軍…と、ドイツ軍ファンにも見どころ多。W号短砲身タイプらしき戦車もチラッと登場。なお主人公に食料を届ける紳士的ドイツ将校演ずるは、スターリングラード(西独1993)の小隊長ウィットランド少尉をやったT・クレッチマン。あいかわらずハンサム! (2007/1)
ライフ・イズ・ビューティフル  LA VITA E BELLA/LIFE IS BEAUTIFUL  1998年イタリア   117分    

監督:ロベルト・ベニーニ、キャスト:ロベルト・ベニーニ、ニコレッタ・ブラスキ、ジョルジオ・カンタリーニ

イタリアに住むユダヤ系イタリア人グイドはもち前の陽気さとバイタリティーで仕事を営み、結婚し子供と3人幸せに暮らしていた。しかしナチスのユダヤ人排斥政策により強制収容所に。だがそこでも前向きに行動し続け、遂には奇跡を起こし家族を守る。


<ネタバレ>

かわいい子供と美人な奥さん。どことなくチャップリンの映画を思わせる…と思ったらロベルト・ベニーニは“イタリアのチャップリン”と呼ばれているのだと!そういえば冒頭で王侯貴族の車列に飛び込んで王様と間違えられるどたばたギャグに始まり、チャップリンテイスト満載。
強制収容所に送られてからは、さしずめモダンタイムズの労働者のイメージかもしれないが、リアル戦争映画になれたマニアにはちょっときついかも。アイデアは悪くないが、いくらなんでもユダヤ人強制収容所はこんなにゆるくないだろう。子供はろくな食事も与えられず一箇所にずっと閉じ込められているのに、病気にもならずいつまでもきれいな服で、最後まで子供らしい元気さにあふれている。
そこを映画の中のファンタジーと割り切り受け入れられれば楽しめるが、だめな人にはついていけないという好みのはっきり分かれる作品。 (2012/5)
シンドラーのリスト SCHINDLER'S LIST 1993米 195分 ★★★

監督: スティーブン・スピルバーグ、出演: リーアム・ニーソン、 ベン・キングズレー、 レイフ・ファインズ、 スティーブン・ザイリアン

ユダヤ人の迫害、そして収容所ものの映画としてはトップと思われる。とにかく人間が家畜以下に扱われる、見ていて胸が苦しくなってくるような映画。
オーストリアの作家トーマス・キニーリーの小説に基づいた実話の映画化だそうだ。戦争の最も非情な一面を知るきっかけに見ておきたい。(2007/1)
影の軍隊  L'Armee des Ombres 1969年フランス  ★★  

監督:ジャン=ピエール・メルビル 原作:ジョセフ・ケッセル、キャスト:リノ・バンチュラ(ゲルビエ)、ポール・ムーリス(ジャルディエ)、ジャン=ピエール・カッセル(ジャンフランシス)、
シモーヌ・シニョレ(マチルド)、クリスチャン・バルビエール(バイソン)

フランス・レジスタンスの主要メンバー達の活動を、全編暗いトーンで淡々と描いた異色作品。
アメリカ映画でよく見るようなドイツ軍に大損害を与える派手な作戦シーンは一切なし。同志を売った裏切り者をどうしたら目立たぬように殺せるか思案したり、高性能無線機を検問をかいくぐってただ運んだり。あるいは連合軍パイロットや脱走兵をイギリスへ戻すため潜水艦と連絡を取り、海岸でこっそり落ち合ったり。しかしそうしていくうちにも同志も次々と捕えられ、拷問を受けたり家族を人質に裏切りを強要されたり…。およそ救いのない状況がひたすら続き、結末の予想すらできない重い一作。山場たっぷりの痛快なアメリカ映画を見慣れた人にはかえって新鮮。


<ネタバレ>
主人公が潜水艦でイギリスへ渡るも同志が捕まった知らせを聞いてフランスへ戻るシーンでは、古いアームストロング・ホイットワース・ホイットリーMk.X(もちろん模型だけど)からパラシュート降下を試みている。こんな風に少人数ならドイツ軍の隙をついて行ったり来たりできていた事実はおもしろい。
つい最近まで共に戦った有能な同士でも裏切りが発覚すれば躊躇せず殺してしまう、非情な後半の展開は強烈。ラストは主要メンバーの悲惨な末路が字幕で示される。ストーリーはレジスタンス活動に従事したメルビル監督の実体験に基づいたという。 (2019/7) 

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