日本映画  太平洋戦争 2000年以降の作品

 野火 Fires on the plain  2014年 87分      

監督:恂{晋也、脚本:恂{晋也、原作:大岡昇平、出演:恂{晋也、リリー・フランキー、中村達也、中村優子、山本浩司、

1959年のモノクロ作品をカラーでリメイク。「プライベート・ライアン」後の映画に倣い、銃撃の閃光や音、飛び散る肉片、転がる腕や足など描写はかなりヘビー。主人公の行動、途中で起こるエピソードなどほとんど忠実に再現されているので、前作を見た人には先の展開が完全に読めてしまう。前作が楽しめた人は比べて観るのもいいかもしれない。

<ネタバレ>
前作よりグロテスクなシーンが増えたが、それが戦争の悲惨さをより表現することに成功したかどうか意見が分かれるところ。むしろモノクロの方が伝わるかもしれない。最後の人肉を食うシーンだって、いくら何でもたった今殺した人間にいきなりかぶりついて口のまわり血だらけにして…ってゾンビじゃあるまいし。ラストシーンは、前作では主人公は撃たれて倒れて終わるが、新作ではその後助けられ治療を受ける。作家活動に戻った現在の主人公が、自宅の縁側で辛い過去に思いをはせるところで終わる。…このパターンも「プライベート・ライアン」以降の流行りをまねたか? (2019/8)
 聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-   2011年 141分    

監督:成島出、キャスト:役所広司、玉木宏、柄本明

山本五十六(役所)が連合艦隊長官になり、真珠湾、ミッドウェイと転戦し一式陸攻で撃墜され終戦を迎えるまでを淡々と描いた一作。

山本の軍人としての評価は様々だがここでは悪いことは描かれず、ミッドウェイの失敗なども南雲長官のせいにしてる。また海軍はよくがんばった…感じ一辺倒で陸軍ファンはつまらんだろう。とにかく戦闘シーンが迫力なく、CGというよりアニメみたいな場面もある。しかし見終わって一番すっきりしないことは、副題に-太平洋戦争70年目の真実-とあるがこの映画で描くその“真実”って何?という感想である。ある程度ドキュメンタリー番組見てたり、関連本を読んでるものにとっては新しい発見はまったくない。ラストシーンのとってつけたようなモノローグがさらに?(2014/8)
 真夏のオリオン  2009年  119分             
 
監督:篠原哲雄、キャスト:玉木宏、北川景子、堂珍嘉邦

太平洋戦争末期に作戦中の伊号潜水艦。やみくもに「国のため死ね」ではなく、「命を大事にしろ、生きぬくんだ」が心情の艦長と彼を慕う乗組員達。若手人気俳優・女優、ミュージシャン出演の、若者向けの爽やかで重苦しくない戦争映画。

のっけから潜水中の潜水艦同士の魚雷戦、最後は無人の回天を二隻平行に発進させ敵駆逐艦の目を欺く作戦〜などなど、突っ込みどころ満載、とてもマニアには耐えられない典型的戦争映画。「潜水艦映画に駄作なし」も残念ながら日本映画には当てはまらず。 (2010/11)
 出口のない海  2006 121分  ★★

監督:佐々部清、出演:市川海老蔵(11代目)、伊勢谷友介、上野樹里、塩谷瞬

終戦まぎわのやけくそ特攻兵器「人間魚雷回天」を描いた典型的お涙ちょうだい映画。
主人公には、優しく教養のある両親、かわいい妹、美人なガールフレンドがいて、死を覚悟しての別れのシーン、死に行く場面でのモノローグと、これでもかと泣かせる演出満載。
それはそれとして、回天内部の細かな描写、操作の困難さ、さらに運頼みともいえる特攻成功の確率の低さなど、これまで描かれなかった回天の実像を知ることはできる。(2007/12)
 男たちの大和/YAMATO  2005 143分 

監督:佐藤純彌、出演:反町隆史、中村獅童、鈴木京香、渡哲也、仲代達矢

戦艦大和って言ったら太平洋戦争の大ネタなのに、こんな映画にされて悲しいねぇ。前後の鈴木京香が出てくるくだりは不要だし、戦闘シーンそのものががっかり。「パールハーバー」の半分でも臨場感出せないものかなぁ。艦載機の襲来なんて昔のウルトラマンの頃と変わってないし。しかし見た人の反応も正直なもので、この映画のあと“大和ブーム”みたいなものも起きなかったよね。アニメの宇宙戦艦ヤマトの時はすごかったよねぇ…。(2007/12)

 ローレライ 2005年  128分  

監督:樋口真嗣、出演:役所広司、妻夫木聡、柳葉敏郎、香椎由宇、石黒賢

1945年8月、広島、長崎に原爆投下。そして3発目が東京に落とされる。それを阻止すべく特別任務につくのはドイツから密かに供与された新型潜水艦。そこまではなかなかわくわくできるのだが、その潜水艦に積み込まれた秘密兵器ローレライとは?…架空戦記ものをはるかに越えてSF、あるいはファンタジーと言いたいような設定に唖然!

艦内のシーンは「眼下の敵」やら「Uボート」やら「U−571」やらのパクリだらけだし。あんな小型潜航艇で日本まで帰れるわけねぇしなぁ…。おまけに凄く金かけてそうなCGは、綺麗過ぎてアニメか最新テレビゲームみたい。それを割り切って楽しめる人にはいいけれど…。しかし、秘密兵器で敵の魚雷をかわしてしまうのは(百歩譲って)許すとしても、爆雷は直撃されなければ済むという兵器ではないぞ!若い奴らがそういうもんだと覚えてしまったらどうする!…どうでもいいか。(2007/3)
 ムルデカ 17805  2001 2時間2分 ★★

監督:藤由紀夫、出演:山田純大、保坂尚輝、榎木孝明、ムハムド・イクバル、ローラ・アマラリア、藤谷美紀、津川雅彦

日本の敗戦後インドネシアに残り、(対オランダ)独立軍の中心となって戦った元日本兵は二千人近くいたとのことで、インドネシア対オランダの戦いも含めて知られざる歴史の映画化は貴重。
物語はその独立戦争がテーマだが、映画は日本軍のジャワ島上陸作戦(1942年3月1日)からスタートする。
その上陸時の戦闘シーンは今までの日本映画に比べてなかなかの迫力。飛び交う銃弾の映像や効果音など、ここにも「プライベートライアン」の影響がしっかり見られる。日本兵がオランダ軍との戦いで壮絶な最期を遂げる各場面は「アラモ」のパクリ。
だが張りぼてのM5戦車はあまりにも無残。オランダ兵も何となく体格がアジア人ぽくて迫力ないのだが、インドネシア国軍動員だそうでそのせいか?日本軍がインドネシア人を訓練する日常があって、連合軍の進攻も空爆もないままあっさり日本降服の報が届く。確かにアメリカ軍はニューギニア→フィリピン→沖縄というルートをたどったので、南方のインドネシアは蚊帳の外だったのかもしれない。例によって話の流れを断ち切るような感じで女優が登場するシーンが何回かあり、日本映画の限界を見る思い。あと、ラストで突如現れる独立反対派(?)の説明がほしかった。(2006/10)

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