東部戦線(その他) WWU Eastern front

 帰ってきたヒトラー  Er ist wieder da 2015年ドイツ 116分   ★★

監督:デビッド・ベンド、製作総指揮:オリバー・ベルビン、マーティン・モスコウィック
キャスト:オリバー・マスッチ(アドルフ・ヒトラー)、ファビアン・ブッシュ(ザバツキ)、クリストフ・マリア・ヘルプスト(クリストフ・ゼンゼンブリンク)、カーチャ・リーマン(カッチャ・ベリーニ)

突然現代にタイムスリップしてきたアドルフ・ヒトラー。たまたま彼の出現に出くわした売れない映像ディレクターのザバツキは、ヒトラーを使って一切のタブーを無視した奇天烈な番組を作り上げる。もちろんザバツキ本人も大衆もヒトラーを物まね芸人か何かとしてみているのだが、現代のドイツの抱える社会問題と奇しくもリンクする彼の過激な演説にファンは増え続けてゆく…。

<ネタバレ>
どのようにして独裁者は生まれるのかということを強烈なブラックユーモアで描く。また「ヒトラー最後の12日間」など過去のヒトラー映画のパロディーも巧みに入っているので、映画をたくさん見てる人ほど楽しめるだろう。ラストにはSFミステリーばりの怖いエンディングも用意されている。(2018/10)
 バトル・オン・ザ・ボーダー ノルディック 極寒の攻防  GRANSEN/BEYOND THE BORDER  2011年スウェーデン  117分  

監督:リカルド・ホルム、キャスト:アンドレ・シェーベリ、ビョルン・スンクェスト、アンティ・レイニ、マリー・ロバートソン

1942年北欧。ノルウェーはドイツ占領下。スウェーデンは中立を維持していたが、国境侵犯警備部隊は緊張の毎日を送っていた。ある日、数人の警備兵がドイツ軍に捕まるが、主人公の弟もその中にいた。国境を越えて彼らを救い出すため決死隊が編成される。

<ネタバレ>

冒頭のテロップ「300人のスウェーデン兵がドイツ軍に連れ去られていた。これはその中の6人の物語である」で映画は始まる。わかりにくい状況だが、要するにドイツ軍はいつでも侵攻できるということで、やりたい放題だったようである。この映画でも墜落したドイツ戦闘機からスウェーデン侵攻作戦書が見つかるくだりがある。ただスウェーデンまで回す兵力の余裕がなく、そうこうしているうちにソ連軍の攻勢でスウェーデンどころじゃなくなってゆくのだ。北欧3国は、大戦中それぞれ違う状況にあり、スウェーデンはあくまで中立だが、両陣営の通過を許したり、ドイツの要求に応じて鉄鉱石を輸出したり、小国が生き抜くために不法行為もしていたようである。複雑な内部事情もあり、味方同士の殺し合いも生じる。なかなか一回見ただけじゃ飲み込めない。主人公のフィアンセが上官に、「彼を危険な任務からはずしてください。「結婚式の日取りも決まっています」と頼むシーンがある。自国は戦時下にないのだから何とかならないかという意識なのだ。しかし国境付近は常に緊張状態にあり、そうもいかない。
映像描写自体は最近のリアル系戦争映画のレベルにあり、ていねいに作ってある。だが当然銃撃戦も小規模であり、なんせテーマがあまりにマイナーなので、主戦場を離れた辺境地域での紛争に興味ある人のみお勧めの映画です。(2012/9)
 カティンの森  KATYN  2007年  122分ポーランド  ★★ 

監督:アンジェイ・ワイダ、キャスト:マヤ・オスタシェフスカ、アルトゥル・ジミイェフスキ、マヤ・コモロフスカ

ソ連軍ポーランド侵攻後に起きた、カティンの森でのポーランド将校捕虜大量虐殺事件を描いた重い作品。物語は戦争の経緯や事件そのものより、戦後もソ連により事実を口止めされていたポーランドの苦悩を重点に描かれている。


<ネタバレ>

冒頭のシーンがショッキング。ドイツ軍侵攻のため橋を渡って非難する一般市民。すると橋の反対側からも逃げてくる人が。「どこへ行くつもりだ?」と問うと「ソ連軍が侵攻してきた!」
将校が捕虜として集合させられている時点からスタートし戦闘シーンは無いが、ポーランド将校やソ連将校の軍装に興味ある人には資料的価値も高そう。ポーランド侵攻から独ソ開戦、ドイツ降伏、その後のポーランドまで長い期間が描かれている。ロシアや東欧映画にありがちなのだが、見たこと無い俳優ばかりで人間関係がつかみづらい。特にこの映画では、子役が後に大人になって別の俳優が演じたりするのでさらに難解に。
後半は占領下の敗戦国のような描写が続き、戦後ポーランドの状況に驚かされる。ラストは胸が苦しくなるような生々しい映像で終わる。 (2015/4) 
 スターリングラード  Enemy At The Gates  2000米 132分  ★★

ジュード・ロウ、ジョセフ・ファインズ、レイチェル・ワイズ

狩人として成長した男が、東部戦線の絶望的な戦況の中で、狙撃兵として国民的英雄に仕立て上げられる物語。新しい映画だが昨今のリアル系悲惨ドラマではなく、全編英語で、ヒロインとのラブロマンスありの見やすい作品狙い。

<ネタバレ>

ソ連軍の自軍兵士に対する非情ぶりはすさまじく、武器もなく文字通り戦場に放り込まれる主人公たち。退却すると味方に撃ち殺される使い捨ての駒。ほんとにこんな事あったのか!?…あったようです。
改造3号戦車(よくできています)が地味に登場するところがよろしい。またCG技術も向上して、Ju87の強襲やJu88の水平爆撃シーンなんかも魅力。(2007/8)
 ヒトラー 最期の12日間  2004独・伊 155分   ★★

ブルーノ・ガンツ、アレクサンドラ・マリア・テラ、トーマス・クレッチマン

<ネタバレ>

遂にベルリンも包囲され、ヒトラーも地下司令部から出ることもなくなってゆく。最後の数日間何があったのか。ヒトラーの秘書として生き残った女性の証言を元にヒトラーの人間像が明らかにされる。

というわけで久々のドイツ映画にかなり期待しましたが…。とにかく地下壕(司令部)での映像が多く、地上でのソ連軍との戦闘が少ないのでがっかり。また「ヨーロッパの解放第5部」を見てる人には、それほど新事実というのもなかったのではないでしょうか。(2008/12)

 スターリングラード STALINGRAD 1993独米 138分 ★★★  

監督:ヨゼフ・フィルスマイヤー、出演:トーマス・クレッチマン、ドミニク・ホルヴィッツ、カレル・エルマネック

TV「コンバット」に始まってドイツ兵はずいぶん長いこと見てきたはずなのに、この映画での新たな発見は多かった。
冒頭の広場に集合するシーンで、その軍服の生地の質感にびっくり。これまでアメリカ映画に出てきたドイツ軍とは違う!…きっと今まで見慣れてたのは、映画用に仕立てられたものだったんだろう。半分に引きちぎる認識票、箱型の懐中電灯対戦車地雷など細かい見どころもたくさん。
海水浴の平和なシーンから、広々とした緑の平原、そして灰色の戦場へと兵士が運ばれてゆく。そして包囲されてからの地獄。T-34は残念ながらおなじみの85タイプJu−52の実機も登場。
悪役の上官と、ロシアの女性兵士の描写がいまいち芝居がかってて気になるが、あとは文句なし。(2006.12)
←やっと発売!DVD

 第27囚人戦車隊 WHEELS OF TERROR  1987デンマーク 99分 ★★★ 

監督:ゴードン・へスラー、出演:ブルース・ディビソン、デビット・キャラダイン、オリバー・リード、デヴィット・ケリー

これぞ「戦争のはらわたU」と呼びたい(オタク向け)名作。
前科ものばかり集められたろくでなし部隊が、無茶な任務を与えられながらけっこういい働きをする、という明快痛快ストーリーだが、オタク向け嬉しい演出満載。おなじみT−34SU−100(W突役?)の戦車戦、塹壕で猛攻を迎え撃つシーンなど迫力。空襲では逆ガルのコルセアらしき戦闘機…本家「戦争のはらわた」のフィルム流用か?
「ロシアは子供とは戦わない」という札をぶら下げられて帰されるドイツ少年兵。爆弾を背負った地雷犬…などなどストーリーとはまったく関係ないにんまりネタもたくさん。始めと終わりに大スター2人がちょこっと登場というのも憎い。全編英語ですが、不思議な味わいのデンマーク映画です。(2007/1)

ついに出ました!DVD
 戦場のメロディー  A Flame to The Phonix  1985英  80分  劇場未公開  

監督:ウィリアム・ブレイン、キャスト:フレデリック・トレヴェス、アン・ファーバンク  

ドイツ侵攻直前のポーランド。人々は平和な暮らしを楽しみ、軍部は事なかれ主義で危機感を持とうともしない。しかし刻々と国境付近から情報がもたらされ、ついに開戦のニュースが舞い込む。「すぐに帰ってこれるから心配しないで」と家族に言い残して出てゆく兵士たち。

<ネタバレ>

1985年の映画なのですべて英語。ポーランド駐在の英大使もポーランド人も英語をしゃべり、おまけに前半は物語りも単調なので見ていて登場人物の関係がなかなか把握できなくて困った。でもドイツのスパイが一般社会に紛れ込んでいたり、この映画ならではの見所もないわけではない。
特に後半では、ドイツ軍によって平和な家族の生活があっという間に崩壊する、その描写があっさりしすぎていて逆に衝撃的。戦闘シーンはわずかだが、勇猛で慣らしたポーランド騎兵隊の無謀な突撃は他の映画では見られず貴重。
ドイツ戦車はM5を改造した変な戦車(白十字をつけてそれらしくはしている)だが、他にも改造kfz2228tハーフトラックもどきも出てくる。それだけ用意したのに戦闘終了まで描かれず、途中で唐突に終わってしまうのはもったいない気がするのだが、そこがイギリス映画らしさと言われればしかたないか…。(2013/11)
 戦争のはらわた  Cross Of Iron 1976西独・英 133分  ★★★  

 ジェームズ・コバーン、マクシミリアン・シェル、ジェームズ・メイスン

原題は「鉄十字章」…みごとな戦功を上げた者に階級に関係なく渡される。主役のシュタイナー軍曹(J・コバーン)は鉄十字章を持つ歴戦の勇士。転属してきたシュトランスキー大尉は、鉄十字章を取ることに躍起になって部下の事など考えない貴族上がりのいやな奴。この二人を軸として、東部戦線の地獄が描き出される。

<ネタバレ>

ドイツ軍が主役という映画自体少ないのに、シュタイナー軍曹以外にもいかしたドイツ兵が何人も出てきて、ドイツ軍ファンのバイブルのような映画。シュタイナーがソ連のPpsh41を使用してるところから始まって、4連装対空機銃とか対戦車銃なんかもチラッと出る小道具の使用も見どころ。例によってT−34/85も登場。ただソビエト兵が何となく「らしくないなぁ…」と感じてたんだけど、調べたらヘルメットがイタリア軍(デザインは似てるがやや小さい)のを使用してるとの事でした。手柄とか階級なんかに無関心なシュタイナー軍曹。最後にシュトランスキー大尉を撃ち殺していたら平凡な映画になったかも知れないが、そうしなかったところがまた味!(2007/8)
 ひまわり  I GIRASOLI/SUNFLOWER   1970伊・仏・ソ  107分  

監督:ヴィットリオ・デ・シーカ、キャスト:ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ、リュドミラ・サベリーエワ、音楽:ヘンリー・マンシーニ

第二次大戦参戦後のイタリア。出征直前に結婚した夫はロシア戦線で行方不明になる。死を受け入れられず異国の地に赴いた妻は、ロシア人妻と新しい家庭を持った夫を発見する…。

<ネタバレ>

映画を見たことなくても、誰でも一度は聞いたことあるテーマ曲。そしてひまわりをバックにした悲しげなソフィア・ローレンのポスター。そのイメージから、もうべたべたのイタリア製恋愛映画と思って敬遠していたがこれが戦争に翻弄される男女の物語、それもロシア戦線のイタリア軍というマイナーな題材を使っていたとは驚き。駅の出征シーンや、終戦でまた駅に降り立つ兵士たちの描写もイタリア軍だけに妙に新鮮。ただ迫力ある戦闘シーンはなく、ソ連軍は実写フィルムのみで10分程度。しかし白衣のスキー部隊や、プロペラ推進式自走ソリの珍しい映像ではある。雪原の敗走シーンは「スターリングラード」(独映画のほう)をスケールダウンしたみたいな感じだが、雪原のイタリア兵というのもやっぱり新鮮。また激戦地あとに作られた兵士たちの墓地の映像も実に重い。
ソフィア・ローレンがヒステリックに怒ったり泣いたり、そして最後は毅然とした態度で男に別れを告げる演技はさすが。それに引き換え男のほうは頼りない感じに描かれていて、やっぱりイタリア男ってしょうがねえなぁと…。全体的に暗いトーンで、イタリア語とロシア語の響きもあいまって物悲しい作品に仕上がっている。直接的な戦闘シーンはないが、戦争の悲劇を十分に出していて、名作といわれているのも納得。(2012/2)
 抵抗の詩  A BLOODY TALE  1969 ユーゴスラビア  

監督・脚本:トーリ・ヤンコヴィッチ、音楽:ボリスラフ・コスチッチ、キャスト:ミラ・スピカ、ゾリカ・ミロヴァノビッチ、バタ・ジヴォイノヴィッチ

ドイツ占領下のユーゴスラビア。レジスタンスの活動でドイツ兵に犠牲者が出るたびに10倍の人数の市民が処刑された。靴磨きなどでわずかな生活費を稼ぐ子供たちもささやかな抵抗の意思を示したが、彼らにも大人たちと同じ容赦ない仕打ちが待っていた。


<ネタバレ>

レジスタンス活動を行うこともない一般市民の平和な生活が一瞬にして壊される。ただそれだけの映画だが、十数人の子供たちを中心に、子供たちの視線で描いたところがこの作品の見所。とはいえ1960年代の東欧映画。今の感覚からするとなんともぬるい映像。市民が銃殺される惨いシーンもストレートには描かれず、ほとんど音声だけ。かといって古いソビエト映画を見るような暗さや情緒もいまひとつ。おまけにみんな英語しゃべるし。
なお、ドイツ軍として登場する車両はM4シャーマンM8グレイハウンド。ところで冒頭でおっさんが家の縁側で酒飲みながら、ラジオに合わせて気分よく歌うんだけど、これが「ヨーロッパの解放」のメインテーマ曲。あれは映画のオリジナルじゃなくて、前からある曲だったのかな。(2015/1)
  愛する時と死する時  A TIME TO LOVE AND A TIME TO DIE  1958年  132分 

監督:ダグラス・サーク、キャスト:ジョン・ギャヴィン、リゼロッテ・プルファー、ジョック・マホニー

過酷な東部戦線からつかの間の休暇で本国ドイツへ戻った主人公。戦局の悪化で郷里も瓦礫の山。行方不明の両親を探す中で再会した幼なじみの女性。互いに助け合ううちに愛し合い結婚する。しかし間もなく休暇も終り再び戦場へ…。

<ネタバレ>

古いアメリカ映画だが主人公はドイツ兵。当然ながら全編流暢な英語使用なので、感情移入しずらいのが難点。物語の大半は休暇中のドイツが舞台。しかし、余裕のない銃後の生活は比較的ていねいに描かれている。タイトルで何となく結末が見えてしまうのはしかたないが、その終り方はあまりに空しい。
最初と最後に少し戦場のシーンがあるが、激しい砲撃に見舞われるだけで、ソ連軍そのものは出てこない。しかしドイツ兵の軍服の着こなしや、疲労しきった様子は60年代の映画よりよく出ている。戦車などは登場しないが、キューベルワーゲンと何とシュビムワーゲンがちょこっと顔を出す。これがなかなか良いでき…というより50年代の映画だし、レプリカじゃなく本物かもしれない。(2011/3)
 地下水道  1957 ポーランド 96分 モノクロ    

監督:アンジェイ・ワイダ、出演:テレサ・イジェフスカ、タデウシュ・ヤンチェル

1944年のポーランド軍雑多な組織によるワルシャワ蜂起。その後半を描いた映画。ドイツ軍の前に組織的抵抗も潰え、ちりじりになって下水道へ追い立てられてゆく。ここでの敵はドイツだが、ソ連のあこぎな政治的工作により彼らは見殺しにされたのでもある。

<ネタバレ>

レジスタンスの戦いが中心なので兵器も服装もばらばら。ドイツ軍からの分捕り品ヘルメット、MP‐40に英国製ステンマシンガン、PIATまで。ドイツ軍戦車はT-34に張りぼて装甲改造車のようだが、なんとゴリアテが登場!勇敢な兵士が飛び出しスコップで有線をぶち切りエンコさせるシーンあり。
後半はやや退屈だが、金髪下着姿の美女が泥だらけになって逃避行!を演じてくれるし。重苦しいだけの東欧映画がと思ったが、意外な掘り出し物。(2008/3)

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