朝鮮戦争

朝鮮戦争を描いた映画はお薦めが多い。ざっと朝鮮戦争の流れを知っておきたい。

1950.6.25〜8月  北朝鮮の奇襲攻撃で、米韓軍は釜山地区に追いつめられる。
1550.9〜11   仁川上陸作戦の成功と釜山からの反撃で、北朝鮮軍は総崩れとなり、国連軍は北朝鮮のほぼ全域を占領。
          その間南西部では、退却できなかった北朝鮮軍がゲリラ化して戦闘を続行。
1950.12     中国共産党の介入で国連軍は押し返され、一時はソウルを再占領される。その後国連軍が反撃、一進一退を繰り返す。
1953.7     38度線で停戦。

 トンマッコルへようこそ  WELCOME TO DONGMAKGOL  2005年韓国   132分  ★★★  

監督:パク・クァンヒョン、キャスト:シン・ハギュン、チョン・ジェヨン、カン・ヘジョン

朝鮮戦争の最中、敵対する兵士達が迷い込んだ山奥の村は、戦争がおきてることも知らない素朴な村人達が暮らす平和な村だった。兵士達は次第に心開き癒されてゆく。だが戦争の波は容赦なくこの村をも飲み込もうとする。そのとき兵士達のとった行動は…。

戦争の真っ只中にあって別世界の空間。地獄を見た兵士達にとってユートピアのような世界。そんな場所に紛れ込んでしまった物語の主人公たち。このタイプの映画にはいくつかのエンディング・パターンがあるが、予想外のラストはものすごい感動を呼び、実に巧妙なストーリー仕立てに見た人はすっかりやられてしまうだろう。
シルミド」や「ブラザー・フッド」のごり押し感動巨編に疲れて韓国映画を敬遠してる人には、こんなファンタジーのような映画もいいかもしれない…と言いたいところだが、後半は一気に緊張モードに入り最後は必ず泣かせる韓国映画らしさにしっかり仕上がっている。私としては最後までファンタジー・モードで見たかったような気もするが、そうはいかない韓国映画である。空爆シーンはあからさまにCGなんだけど、この映画にはその嘘っぽさがむしろ合っていて悪くない。(ただしアメリカ軍がP-47サンダーボルトを使用したかは疑問)だからこそ一瞬だけ描かれる「ブラザー・フッド」みたいなリアルな戦死シーンが浮いた印象で残念。
北朝鮮兵士役のチェン・ジェヨン(「シルミド」)が渋くて良いが、何といってもちょっとおつむの弱い女の子を演じたカン・へジョンのかわいさにはいちころです。素朴な村人達、特に子供達の演技も自然でいいんだよ。ただもう少しテンポよく、2時間以内にまとめたらもっとよかったと思うけど。(2011/11)
 38度線  Field Of Honor 1986米 93分    

監督:ハンス・シープメーカー、出演:エバリット・マッギル 、ミン ユー 、ヘイ ・ヤング・ リー

朝鮮戦争は「アメリカ・韓国」「北朝鮮・中国共産党軍」の戦いと思ってたんだが、南側は実に16カ国連合軍であったことをこの映画で知った。その中のオランダ軍の物語というのがこの映画。しかし装備はほぼアメリカ軍と同じでみんな英語をしゃべる。装備はともかくアメリカ映画だから英語なんで、本当はオランダ語をしゃべったと思うけど…。

しかしとんでもない映画である。最初の中共軍の猛攻でちりじりになる部隊。主人公は文字通りサバイバルの戦いを強いられる。そしてそれは一般市民も同じこと。母と姉が兵隊たちに体を提供し、弟がお金を受け取る係という哀れな三人家族。それでも生きていければましだが…。戦闘シーンそのものは少ないのにすさまじい戦争映画である。中国共産党軍の個人装備を詳しく見ることができる。(2006/8)

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 M★A★S★H  1970年米  116分 

監督:ロバート・アルトマン、出演:エリオット・グールド、ドナルド・サザーランド、トム・スケリット

朝鮮戦争の米軍野戦病院が舞台。MASHは移動野戦外科病院の略である。
軍規も守らず、看護婦を口説いて回る主人公達のふざけきった行動が全編続く。ベトナム戦争当時に作られた映画で、反戦のメッセージも込められているが、そういった作品を今見ても面白さが感じられるかわからない。戦闘シーンはまったくなし。当時の後方部隊の装備、ジープなどのヴィークルをチェックしたい人にはお薦めだが。
日本のラジオ放送が入るということで、日本語の歌謡曲が随所に流れ、名画“最期の晩餐”を取り入れた場面があったりと、まったりとゆるいユーモアに浸りたい時に見ましょう。(2008/10)



 帰らざる海兵  The Marines that Never Return 1963韓国 モノクロ110分 ★★

監督:イ・マニ、脚本:チャン・グクチン、出演:チャン・ドンフィ、チェ・ムリョン、イ・デヨプ

60年代の韓国映画だが、日本でビデオ化されたのはだいぶあと(2000年)で、パッケージに“韓国の「プライベート・ライアン」”とあったのには苦笑したが、見所は満載であった。
仁川上陸作戦の主力は米軍だが、韓国の海兵隊も旅団規模で参加している。物語はその海兵隊の仁川上陸から内陸部への進攻。そして中共軍との戦いまでを描いている。上陸シーンではLTV-3による迫力ある戦闘が見れる。M4シャーマンも登場するが戦闘シーンはない。その後は北朝鮮軍との市街戦。そして人海戦術で押し寄せる中共軍相手の必死の防御戦と歩兵戦闘中心だが、60年代の作品としては見事な迫力で、同時代のアメリカ映画にも決して引けをとる物ではない。

ただ韓国のお国柄でやたらと泣くシーンがあり、その一方でこてこての吉本喜劇のような場面がいきなり出てきて面食らったりする。日本映画も昔はそうだったが、娯楽作品としていろんな見せ場を詰め込むのが当たり前の時代だったのかもしれない。そんな独特のノリで、だめな人にはまったくだめかもしれないが、一見の価値はある映画だ。(2008/12)
 勝利なき戦い Pork Chop Hill  1959米 モノクロ  ★★★ 

監督:ルイス・マイルストン、出演:グレゴリー・ペック、ハリー・カーディノ、ジョージ柴田

これは停戦まぎわ、まさに停戦協議中に行われた丘の争奪戦。協議に向け少しでも有利な状況を作りたい上層部。ここにきて死にたくはない兵士達。それでも命令を遂行しなければならない現場指揮官の苦悩をグレゴリー・ペックがみごとに演じている。数少ない彼の主演戦争映画だが、実にかっこいい。軍服、ヘルメット、M2カービンがばっちりはまっている。
また作戦全体が小隊、分隊ごとにわかりやすく示されるので、戦場での緊迫した状況も指揮官の身になって味わえる。
ちょうど第二次大戦とベトナム戦の折衷型のような個人装備もじっくり見ておきたい。(2006/8)

 追撃機  The Hunters 1958米 ★★

監督:ディック・パウエル、出演:ロバート・ミッチャム、ロバート・ワグナー

主人公が着任地(伊丹!)の酒場で部下と出会うと、こいつがどうしようもない飲んだくれで酔い潰れてしまい、仕方なく家まで送ると美人の奥さんがいて夫婦仲は予想通り冷え切っている、という転回でやれやれ…と思ってしまうが、そこを差し引いても迫力のお薦めジェット戦闘機映画。


とにかく訓練シーンも含め、今では懐かしいF86セイバーの迫力の編隊飛行シーンがたっぷりと楽しめる。相手のミグ15(?)役はF84だそうで残念ですが、ドッグファイトは文句なし。サイドワインダーもない時代で、ひたすら機関砲を撃ちまくる。
R・ミッチャムと人妻のデートの舞台は日本。最後は撃墜されて敵地を逃げ回る、と言うとこも「トコリの橋」に似てるけど、旧式ジェットの空戦ものならこの二本は絶対押さえたい。最後にチラッとギリシャ兵が出てきます。(2006/9)
 最前線 Men In War  1957米 白黒 1時間40分   ★★★ 

監督:アンソニー・マン、出演:ロバート・ライアン、アルド・レイ、ヴィック・モロー

朝鮮戦争の序盤戦、北朝鮮の奇襲攻撃により孤立した部隊の必死の脱出行を描く。

BGMも砲声もなく、聞こえるものは風の音くらい。無線兵が声を殺して本隊を呼び続けるが応答なし。それでもまた一人見張りが殺され、装備が奪われる。見えない敵(北朝鮮兵)に囲まれた恐怖。
一方で、タバコの火を指でもみ消して(あとでまた吸うため)ポケットにしまう、戦死者の認識票を(引きちぎらず)銃剣で切り取ってホルダーに取り付ける、部下の名を手帳を見ながら呼ぶ…などなど、細部にもこだわる描写が新鮮。

「コンバット」前のヴィック・モローが、サンダース軍曹からは想像もつかないような臆病な兵士を演じているのも面白い。ただ、前半の緊迫感に比べ最後の戦闘からエンディングにかけて、詰めの甘さが残念。(2006/8)


 トコリの橋 The Bridges At TOKO-RI 1954米 1時間42分  ★★

監督:マーク・ロブソン、出演:ウィリアム・ホールデン、ミッキー・ルーニー、グレース・ケリー

朝鮮戦争というと「初のジェット戦闘機による空中戦」で有名だが、第二次大戦の老兵ムスタングコルセア、ついでにB-29なんかも出たのである。そしてジェット戦闘機対決といえばF-86対Mig-15であるが、この映画では海軍(空母)主体なのでF9Fが登場。またプロペラ機ではスカイレーダーなんかも見れる。またベトナム戦争での走りになった、ヘリコプターによる救出活動描かれ、レトロな臭いのぷんぷんするHO-3というヘリも見ることができる。海軍が全面協力しただけあって、発着艦シーンはなかなかの迫力。タイトルのトコリの橋の空爆シーンは、CGなどまったくない時代の特撮で、むしろ新鮮な緊迫感がある。
なお補給基地となった日本の街(横須賀、東京)も出てくるが、何となく不思議空間してるのも日本人にとっては苦笑もの。 (2006/8)

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