海戦(第二次世界大戦・ヨーロッパ)

 ビロウ BELOW 2002米 105分  ★★

監督:デヴィッド・トゥーヒー、出演:マシュー・デイヴィス、ブルース・グリーンウッド、オリヴィア・ウィリアムズ

大西洋で行動する米潜水艦。救命ボートで浮遊する3人のイギリス人を救助するところから物語が始まる。
攻撃を受けて沈没した病院船の生存者だと言うのだが、執拗に追いすがる独駆逐艦との戦いの中、様々な謎が浮かび上がり、艦長の不可解な行動から、隠された過去の秘密が次第に明らかになってゆく。もちろん駆逐艦との戦闘は新しい映画だけあってなかなかの迫力。サスペンスとスリラー映画の味わいを持った潜水艦映画。


<ネタバレ>

「バンド・オブ・ブラザース」のデクスター・フレッチャーが出演している。冒頭でカタリナ飛行艇(実機と思われる)の悠然とした飛行シーン、駆逐艦による鎖フック攻撃という珍しい見ものもある。(2008/10)
 エニグマ ENIGMA  2001年英   119分  ★★  

監督:マイケル・アプテッド、キャスト:ダグレイ・スコット、ケイト・ウィンスレット、サフロン・バロウズ

戦争の表舞台には登場しない、暗号解読所で働く職員たちの地道な活躍。ナチスの暗号化装置エニグマの解読で、Uボートの攻撃から輸送船団を守ろうとする。その一方で愛する女性の失踪事件を追う主人公は、大きな陰謀にたどり着く。

<ネタバレ>


1943年3月、輸送船団SC122HX229に襲いかかったUボート群の実話を軸に、暗号解読に取り組む職員たちの活動と、そのかたわら女性の行方を追う主人公のサスペンスタッチの部分とが平行して進んでゆく。暗号解読所の室内映像と、輸送船団にじわじわと迫るUボートの交互の描写は見物。しかし戦闘シーンそのものは今時珍しくミニチュア使用でややチープ。意外と謎解きが難解なので、ぼんやり見てるとわからなくなるかも。昨今のアメリカ映画のようなCG多用の派手なシーンはないが、イギリスらしいていねいで落ち着いた一作。
なお輸送船団SC122HX229の一件は、学習研究社<歴史群像・欧州戦史シリーズVol.6「大西洋戦争」に詳しい。(2011/3)
 U−571 U-571 2000米 116分  ★★★

監督:ジョナサン・モストゥ、出演:マシュー・ヒコノヒー、ハーヴィ・カイテル、ジョン・ボンジョビ

Uボート名がタイトルになっているがアメリカ軍が主役。Uボートに成りすまし近づき、Uボートに積まれた暗号機エニグマを奪取しようという大胆な作戦。昔から潜水艦映画に駄作はない、といわれているがこれも見どころたっぷり。

<ネタバレ>

新しい作品だけあってアクションシーンは申し分ないし、繰り返しピンチに襲われる中で次の判断を迫られる主人公。
任務を完遂する中で成長し、部下の信頼を勝ち取るという感動の人間ドラマもあり。
最近の映画にしては長すぎず(2時間以内)、すっきりまとまってるとこもよし。(2006/8)

 ラストUボート DAS LETZTE U-BOOT/THE LAST U-BOAT 1993年 米独日壕 105分 ★★

監督:フランク・バイヤー/村上佑二、脚本:クヌート・ベーザー/岩間芳樹、撮影:ヴィトルト・ソボチンスキー、音楽:オスカー・サラ、出演:ウルリヒ・ムーヘ, ウルリヒ・ツクール, 小林薫, 大橋吾郎, 児玉清  (WW2・海戦)

敗戦濃厚となったドイツから原爆製造用ウラン、電波発進装置、そして二人の日本人将校を乗せたUボートが日本へ向かう。戦争継続のためになんとしても作戦を成功させたい日本の企図を阻止すべく、英米の駆逐艦が追う。しかも航海の最中ドイツ降伏の報が届く。潜水監指揮官の決断は…。「Uボート」や「U‐571」の迫力には及ばないが、実話に基づいた物語で、日独英米それぞれの思惑が絡むなかなか見応えあるドラマ。

<ネタバレ>

ドイツと日本の降伏には3ヶ月の差があった。この間における物語は少なく、また日独が実際に共同した作戦を描いたものも少ないので貴重。同盟国でありながら日独、英米それぞれの微妙な不信感なども描かれている。劇場未公開作品らしく戦闘シーンは迫力に欠けるが、刻々と変わる状況に翻弄され、立場の対立から起こる人間ドラマで最後まで引っ張ってゆく展開。残念なのはUボート役の潜水艦が明らかに戦後の標準タイプでまったく“らしくない”点と、ドイツ語でなく英語使用になってるところ。(2010/1)
 Uボート  Das Boat  1981西独  139分(ディレクターズ・カット209分)   ★★★

ユルゲン・プロフノウ、クラウス・ヴェンネマン、ベルント・タウパー、ヘルベルト・グリューネマイヤー

待ってました!のドイツ映画。大西洋で狩をしつつ、イタリアへ向かう任務に就いたU96。
兵士ではない報道官が乗船し、見ている私たちと同じ目線で潜水艦内の日常が描かれていく。出航するときの港の風景、軍楽隊の演奏の中を航行するUボート美しさ。備蓄された食糧など細かい描写も新鮮。騎士道精神の残る海軍気質。戦いのなかでは深海での水圧による不気味な軋み音。吹っ飛ぶボルト。狭い艦内の乗組員たちの汗と、息苦しさが伝わってくる。最後にやっとの思いで港にたどり着いたのもつかの間、あまりにも空しく悲しいエンディングが待ちうけていた。

<ネタバレ>

なおこの映画はもとは全6回のTVシリーズだったもので、映画用に短く編集したものだという。有料TVのスーパー・チャンネルで以前その6回が放送されたことがある。(2008/8)
 眼下の敵  The Enemy Below  1957米 98分   ★★★

ロバート・ミッチャム、クルト・ユルゲンス、セオドア・バイケル、アル・へディソン、ラッセル・コリンズ

こちらはUボート対駆逐艦の一騎打ち。どちらも援軍は到着せず、死力を尽くして戦う姿を両軍公平に描いている。駆逐艦側の描写も多く入るので、潜水艦内の息の詰るような場面から、洋上の場面に移ると見ているこちらまでほっとし思わず深呼吸しちゃう!古典的名作。

<ネタバレ>

心理戦もみごと。見えない相手に対して爆雷を落とし続ける駆逐艦。Uボートの船員がかなりまいっているので、(普通なら音を出してはいけないのに)艦長(K・ユルゲンス)はレコードをかけさせ、皆で合唱する。それを聞いた駆逐艦の副官は「まるで平気なようですねぇ」と言うと艦長(R・ミッチャム)は「いやぁ、かなりまいっているよ」と言いさらに攻撃を続ける。駆逐艦の副官役は懐かしいTVドラマ「原潜シービュー号」の艦長。
なお早川文庫の小説では、Uボートの相手はイギリス軍。エンディングもちょっと違っていて面白いのでお薦めです。(2008/8)
 戦艦シュペー号の最期  The Battle Of The River Plate  1956英  119分  

監督:マイケル・パウエル、出演:ピーター・フィンチ、アンソニー・クウェイル

ベルサイユ条約において厳しい制限をつけられたドイツ海軍。洋上の戦いにおいても、Uボートによる通商破壊作戦と同じ構想を作り上げた。こうして戦艦より早く、巡洋艦より火力の大きい小型戦艦が生れた。物語は史実を忠実に再現してゆく。南大西洋で神出鬼没のグラーフ・シュペーを発見した3隻の英巡洋艦隊。ワンクラス劣るとはいえ3対1なら何とかなるだろうと戦いを挑む。

<ネタバレ>

前半は洋上の戦い…といっても空母中心の太平洋日米決戦に比べるとやはり地味。しかしそれが返って帆船時代の戦いのような人間味が出て面白い。後半は中立国ウルグアイの港モンテビデオに逃げ込んだシュペーと、外海で待ち受ける英艦隊のにらみ合いの中で進む政治的駆け引き。それをまったく野次馬気分で眺めるモンテビデオの人々と平和な町並みが、戦争映画であることを忘れさせるような不思議な味わいの映画である。(2008/8)
 暁の出航  MORNING DEPARTURE/OPERATION DISASTER  1949英  モノクロ 98分  

監督:ロイ・ウォード・ベイカー、出演:ジョン・ミルズ、リチャード・アッテンボロー、ナイジェル・パトリック

イギリスの映画会社アーサーランク社(40〜60年代が黄金期)の作品。
訓練航海に出た英国潜水艦。前大戦で放置されたままの機雷により沈没。生き残った船員は脱出の方法を必死に探す。海上からの救難部隊も嵐のため作業は困難を極める…。


<ネタバレ>
というわけで厳密には戦争映画といえないかもしれないが、潜水艦者が好きな人にはお薦めの一作。古い映画なのでもちろんCGはないし派手なアクションもないが、密閉された空間でのドラマが充分楽しめる。海底の密室空間という独特の状況が、やはり潜水艦映画に傑作が多い理由なのか。
艦橋前部に大砲を持つ珍しい型。出航前のシュノーケルの作動シーンなどもさりげなく見れる。(2008/12)

 海の牙  LES MAUDITS/THE DAMNED   1946年仏  101分 モノクロ ★★ (海戦)

監督:ルネ・クレマン、キャスト:マルセル・ダリオ、アンリ・ヴィダル、ポール・ベルナール、ミシェル・オークレール

ドイツ降伏直前の1945年4月。南米へ脱出を計るUボートと、そこに乗り込んだ人間たちの心理ドラマ。途中ドイツ降伏の報が入り状況は一変。裏切りや水平の反乱が起きる。

<ネタバレ>

Uボートが出航するのは最後までドイツ占領下にあったノルウェー、オスロのUボート基地。その描写は短いが本物のUボート(Z型)の姿もあり、ちょっとした見どころ。実写フィルムも使用されているが、もともと古いモノクロ映画なので違和感ないのが救い。
爆雷攻撃、逃亡者の射殺、事故死、水平の反乱など見せ場は多いが、見慣れたアメリカ映画に比べるとテンポも遅く、アクションシーンの迫力のなさも否めない。しかしたまには古典の名作の世界に浸ってみようという気持ちで臨めば、例の狭い潜水艦映画の味わいは楽しめる。終戦前後の混乱に興味ある人にもお薦め。 (2011/5)

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