アフリカ戦線  WWU African front

 イングリッシュ・ペイシェント THE ENGLISH PATIENT  1996  162分  

監督:アンソニー・ミンゲラ、出演:レイフ・ファインズ、ジュリエット・ビノシュ、ウィレム・デフォー、クリスティン・スコット・トーマス

1944年北アフリカ。考古学者アルマニー(レイフ・ファインズ)操縦する複葉機がドイツ軍対空砲に撃墜される。大やけどするが収容され一命を取り留める。カナダ軍医療部隊は移動することになったが、一人ハナ(J・ビノシェ)は志願して回復に見込みない彼と残る。彼女は自分の身近な人間が次々と死んでゆくトラウマから居残ることを決めたのだった。
病床のアルマニーの口から過去が語られ、今に至る経緯が最後に判明する。北アフリカを舞台に戦争に翻弄される男女のラブロマンスを壮大に、そして切なく描いた大作。戦闘シーンそのものはほとんどないので、切ない大人のラブストーリーをじっくり味わいたい人向け。

<ネタバレ>

登場人物の関係がかなり入りこみ、それぞれの回想シーンが頻繁に入るのでしっかり見ていないとストーリーが理解できない。要は主人公と人妻の不倫物語。しかもそれが2時間半の長丁場なので戦争映画とは期待しないこと。
しかしアフリカ戦ファンには捨てがたい作品ではある。トブルクがドイツ軍の手に落ちるシーンで珍しい空挺降下。そしてキューベルワーゲンマーダーVケッテンクラートがチラッと登場する。それもわずか数分のシーンなのにぜいたく!そこのドイツ将兵役にユルゲン・プロホノフ(「Uボート」艦長)やセバスチャン・ルドルフ(「スターリングラード」ミューラー)が居るのも嬉しい。 (2014/10)
  戦場の黙示録  TOBRUK 2008年チェコ・スロバキア  99分  ★★  

監督:ヴァーツラフ・マルホウ、原作:スティーヴン・クレイン、音楽:リチャード・ホロウィッツ、脚本:ヴァーツラフ・マルホウ
出演:ヤン・メドゥナ、ペトゥル・ヴァネク、ロベルト・ネブランスキー

1941年北アフリカ戦線。イタリアの攻撃を跳ね返しトブルクを占領したイギリス軍の指揮下で、防衛の一翼を担うチェコスロバキア義勇兵のたちを事実に基づきリアルに描いた、超渋渋地味映画。

<ネタバレ>

ドイツのチェコ併合により祖国は消滅。義勇兵が連合国側について戦ったことをこの映画で知った。舞台は北アフリカ。装備はイギリス軍。でも言葉はスラブ系のチェコ語。砂漠地帯なのにロシア戦線のような不思議な感覚。勝者連合国側とはいえ、北アフリカ初期の戦いはシーソーゲームだったので過酷な状況を描いた作品は多い。
主人公やその仲間が大活躍し、冒頭、中盤、クライマックスに見せ場のある見慣れた娯楽大作とは一線を画す、地味で退屈で全然スカッとしない映画。しかし、特別な技術も勇敢さも持ち合わせない普通の人間が、戦場に放り込まれたらこうなるのだというシビアな見ごたえのある映画だ。
ただし、タイガーTが走り回り、Me109Eが飛び回るパッケージアートは大嘘!おーうそ!! (2012/4)
 炎の戦線エル・アラメイン EL ALAMEIN/EL ALAMEIN: THE LINE OF FIRE  2002伊 113分 ★★★
 
監督: エンツォ・モンテレオーネ、キャスト:パオロ・ブリグリア、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、ルチアーノ・スカルパ

エルアラメインの戦い、主戦場から離れた戦線で見捨てられた兵士達の悲惨さを描いた渾身のイタリア映画。

<ネタバレ>

重火器といえば迫撃砲くらい。常にきれいな水に飢えている兵士達。主戦場から離れた場所での悲惨さ、惨めさを前面に出した描写の数々。完全に捨て駒である部隊は、もはやまともな戦闘すらさせてもらえない存在。イタリア軍の装備は、水筒などの小物からトラックまで史実に忠実にそろえられたもので見応え満点。
それに対し英軍の戦車、装甲車は代用品で済ましているのがちょっと残念。戦車はM47みたいだし、装甲車はM3とM113。全体的には「スターリングラード(西独・米1993)」をひと回り地味にした感じだけど文句なし。スターリングラードのドイツ軍ににエル・アラメインのイタリア軍。あとはニューギニアかインパールで壊滅した日本軍の映画でも、誰か作ってくれないか。女が一人も出てこないガチガチの戦争映画を。
(2010/5)
 トブルク戦線 TOBRUK 1966年 109分  
 
監督:アーサー・ヒラー、出演:ロック・ハドソン、ジョージ・ペパード、ナイジェル・グリーン

独軍になりすましたユダヤ人部隊とその捕虜になりすました英軍部隊が、トブルクの独軍陣地に潜入し燃料貯蔵庫を爆破する!…という荒唐無稽、典型的60年代アクション大作。公開当時は大ヒットしたらしいが、今の目で見ると少々辛いのは仕方ない。でも砂漠特有の戦闘描写、空軍・海軍合同作戦と盛りだくさんなので、ヒットしたのは納得できます。
ドイツ軍戦車役でM−41、M-48、ハーフトラックM-3らが出演。R・ハドソンとJ・ペパードという組合せも戦争映画にはイマイチ感。ボージェストのG・ストックウェルが悪役で登場。
(2008/8)


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 戦車対戦闘機 砂漠の対決 DEATH RACE  1973年 73分  ★★ 

監督:デビッド・ロウウェル・リッチ、キャスト:ロイド・ブリッジス、ダグ・マクルーア、ロイ・シネス、クリストファー・ケリー(イタチ)、
    ブレンドン・ブーン(アパッチ)、エリック・ブレーデン(ハンス・ガデガスト)

ドイツ軍の配色濃い北アフリカ戦線1942年。安全と思われた任務についたP-40がドイツ軍の銃撃で墜落。飛行は不能だが
滑走だけはできる一機のP-40と、それを執拗に追いかける一輌のドイツ軍戦車。低予算B級ムービーながら、アイデアで見せる一作。


<ネタバレ>

飛び立てないが滑走はできる戦闘機が逃げ回る…砂漠が舞台だからできる一騎打ち。これも「サハラ戦車隊」や「レッドアフガン」みたいに一台の戦車(ついでに戦闘機も)をずっと楽しめる映画。
ドイツ軍戦車兵役に「コンバット」や「ラット・パトロール」でおなじみのE・ブレーデン(ハンス・ガデガスト)。さらに「ギャリソンゴリラ」から2人〜B・ブーン(アパッチ)、C・ケリー(イタチ)〜出演という嬉しい配役。途中からドイツ指揮官(R・ブリッジス)の異常な命令ぶりに、戦車兵たちと亀裂が生じてゆく展開も良し。
 熱砂の海  SEA OF SAND/DESERT PATROL  モノクロ1958英  97分  ★★

監督:ガイ・グリーン、出演:リチャード・アッテンボロー、マイケル・クレイグ、ジョン・グレッグソン

これもアーサーランク・ベストコレクション。イギリス軍の戦いを描いた極渋アフリカ戦もの。
ヨーロッパやロシアと違い、アフリカは明確な戦線ができにくかったため実在した精鋭長距離砂漠部隊。本隊の攻勢を前に敵地奥深く潜入し、補給物資を破壊する任務。いわば映画「トブルク戦線」や人気TVシリーズ「ラット・パトロール」の原型だが、こちらはむちゃくちゃリアル。敵の弾もバンバン当たるので次々と出る犠牲者。任務に成功しても無事帰れるかわからない砂漠の現実。歩けない者は置いてゆく非情。


<ネタバレ>

英軍側は他の映画ではまず見ることのないL.R.D.G.デザートシボレーを使用。独軍側は米軍のM3ハーフトラックと、4輪車を改造してSd.Kfz222偵察装甲車に似せたのが登場。
また戦闘機はおなじみMe-108。なおMP‐40MG-42が調達できなかったらしく、ドイツ兵もステン短機関銃を撃ち、ハーフトラックにつけた重機はブレンMk.1の改造ってとこがまた古いイギリス映画らしくて味。   (2009.8)
 最後の決死隊  THE STEEL BAYONET  1957年英  モノクロ86分  ★★

監督:マイケル・カレラス、出演:レオ・ゲン、キーロン・ムーア、マイケル・メドウィン

ドイツ軍の反攻に対し最低限の部隊で砲兵観測所をつくり、ぎりぎりまで踏みとどまって味方砲兵に無線連絡を行なうという、自殺行為ともいえる任務。砂漠にある農家はちょっとした砦のような味わいで、歩兵部隊の戦術レベルの行動を細かく描写。実に人間味あふれるドラマに仕上げている。

<ネタバレ>

英25ポンド砲のほか、ブレンMk1、PIATなどの英軍小火器もじっくり見れるし、ウィンザー(ユニバーサル?)キャリアや、ドイツ軍戦車として登場するA27(セントーまたはクロムウェル)も古いイギリス映画ならでは。地味な映画ではあるが、アフリカ戦線・イギリス軍ファンにお薦め。(2008/11)

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 砂漠の鼠 THE DESERT RATS  1953年米  モノクロ 88分 ★★

監督:ロバート・ワイズ、出演:リチャード・バートン、ジェームズ・メイソン、ロバート・ニュートン

ロンメル主役の「砂漠の鬼将軍」の姉妹編として製作された映画だが、こちらは全編アフリカが舞台で、英国連邦の一員として戦ったオーストラリア軍の戦闘が描かれている。
ドイツ戦車役にはM24チャーフィーが登場。味方はM8グレイハウンドだが、前半の対戦車戦闘は古い映画ながらなかなかの迫力。実写フィルムで6ポンド砲、25ポンド砲などの射撃シーン。後半やや地味な展開になるが、構築陣地を中心とした砂漠特有の戦いをじっくりと味わえる。救援に到着する英軍戦車は実写フィルムで、チャーチル、クルセーダーなどが見れる。(2008.12)


 砂漠の鬼将軍  The Desart Fox 1951米 モノクロ88分  

監督:ヘンリー・ハザウェイ、出演:ジェームス・メイスン、ジェシカ・ダンディ、セドリック・ハードウィック

単なるアフリカ戦線ものかと思ったら違った。これはロンメルの伝記といった趣き。
ヒトラー暗殺計画に加担したとの嫌疑で自殺を強要されたロンメル。元イギリス兵の小説を元にした映画である。砂漠の戦いは30分ほどで、あとはノルマンディ上陸及びその後の戦い…といってもほとんど実写フィルムとナレーションでとんとんと進んでゆく。その代わりといったら何だが、実写フィルムには貴重な映像が多い。クルセ−ダー、マチルダ、M3グラント、25ポンド砲などのイギリス軍。西方防壁と呼ばれたトーチカや海岸砲、(場所は不明)列車砲。ノルマンディのアメリカ軍M4M5やら、白グリップコルトを腰にぶら下げたパットン将軍!まで。
地味な古典的映画だが最期は悲しい幕切れ。ロンメルのみに焦点を当てた映画は少ないので捨てがたい。ただ、顔も似てない上に英語をしゃべるヒトラーだけはどうにもなりません。(2006/8)
 最後の突撃 THE WAY AHEAD  1944英 モノクロ114分  

監督:キャロル・リード、出演:デヴィッド・ニーヴン、スタンリー・ホロウェイ、レイモンド・ハントレー

軍隊とは何か、歩兵とは何か。一般市民が招集されて、行きの列車の中で同じ部隊と知って言葉を交わすところから始まって、一人前の兵士になるまでを実に細かく、ていねいに真面目に真面目に描いた歩兵の教則ビデオみたいな映画。
最後の最後になってトーチ作戦の後続部隊として、北アフリカアルジェリアの戦いに参加。
しかし史実の再現でもなく、派手なアクションでドイツ軍をやっつけるわけでもなく、英軍魂を象徴的に描いて終わる…というわけでかなりの大英帝国陸軍ファン以外にはしんどい映画。国民の士気を挙げるために戦争中につくられた映画だから仕方ありませんが。
なお古いイギリス映画の例に漏れず、Mk6クルセイダー(A15)ユニバーサル・キャリアーM3スカウトカーなどの車輌の他、おなじみの6ポンド砲や、エアフィックスから模型も出てたAECマーダートラック5.5インチ砲と見ものはけっこう豊富。ドイツ軍戦車役はなんとMk3バレンタインだったりする。(2009.8)
 サハラ戦車隊  Sahara  1943米  モノクロ 97分   ★★ 

ハンフリー・ボガード、ロイド・ブリッジス、レックス・イングラム

第二次世界大戦・アフリカ戦線の古典的名作。
戦争中の1943年に作られたのが驚き。アメリカ軍は‘42年11月に北アフリカに上陸しているので、上陸後すぐ制作されたのである。戦意高揚が目的だからボガード演ずるアメリカ兵が主役ながら、イギリス兵、フランス志願兵、スーダン兵らが協力し合う、ミニ連合軍とも言える構図が面白い。
ボガードの映画なのにヒロインの女性がいないと思ったら、戦車に「ルルベラ」って名前付けて「よくがんばったな」なんて撫でてやったりしてる。この映画は戦車がヒロインというわけである。その戦車というのがおなじみのM4シャーマンではなく、珍しいM3リー(アメリカ軍仕様)。最初から最後まで、なめ回すようにその姿を楽しむことができる

なお、リメイクした「廃墟の守備隊(Last of The Comanches)」という映画が1952年に作られている。こちらは西部劇で、戦車の代わりに駅馬車、アメリカ兵が騎兵隊でイギリス兵が一般市民。ドイツ軍がインディアン(コマンチ族)で、イタリア兵は白人に友好的なインディアン(カイオワ族)という設定。笑っちゃうほどそのまんまなストーリー。しかもロイド・ブリッジスは両方に出てる!(2006/8)

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