東部戦線(ロシア・旧ソビエト映画) WWU Eastern front

 T-34 レジェンド・オブ・ウォー T-34 2018ロシア オリジナル版113分/ダイナミック完全版139分/DC版191分 ★★★

監督:アレクセイ・シドロフ、製作:ニキータ・ミハルコフ、他、脚本:アレクセイ・シドロフ
キャスト:アレクサンドル・ペトロフ(ニコライ・イヴシュキン)、イリーナ・ストラシェンバウム(アーニャ)、ビツェンツ・キーファー(イェーガー大佐)
独ソ戦初期ドイツ軍の猛攻で消耗しきったソ連軍。戦車兵士官ニコライはある村へ赴任、防衛任務を命じられる。しかし戦力はT-34(76A)1両と歩兵1個分隊のみ。巧みな作戦でドイツ軍戦車中隊をほぼ壊滅させるが、撃退はならず捕虜となる。
時は流れ戦争後期の1944年。ドイツ軍は捕獲したT-34/85を捕虜に修理させ、新型戦車5号パンサーの演習標的として操縦させる計画を立てる。その指揮官にあたったイェーガー大佐は、捕虜の中にかつて自分の戦車中隊を壊滅させた戦車長ニコライを見つける。ニコライはT-34の修理と部下の訓練を任されるが、車体内部に実弾6発を発見、演習のさなかに脱出する計画を練る…。

ロシア映画が「ハリウッド映画に追いつけ、追い越せ!」とばかりに実写による迫力の戦車戦、斬新なCG映像、ロシア人女性とのラブロマンスなど娯楽要素をこれでもかと盛り込んだヒット映画。しかしスローモーションで飛び交う砲弾の映像、ラストの戦闘プロットはやりすぎ感もあり、観た人により賛否が分かれそう。


<ネタバレ>
基本アイデアは1964年の映画「鬼戦車T-34」から取ったと思われるが、実弾装備で大幅に膨らませた内容になっている。
冒頭の戦闘シーンはよくありそうなロシアの村が再現され見応えあり。3号、2号戦車のできもよく、歩兵とのカラミもリアルでその先の展開にわくわくするが、後半はやや期待はずれ。とにかく5号パンサーの出来が悪いし、気色悪い迷彩塗装に気持ちが入らず。相手はたった一両なのに、ドイツ側は随伴歩兵もなくてこずるし、突っ込みどころ満載。マカロニウエスタンみたいな最後の一騎打ちには苦笑。
出演メカは戦車のほか、ハーフトラックはよく他の映画で見かける車体側面が角ばってないOT810?、偵察機にシュトルヒなど。

なおオリジナル版・113分、 ダイナミック完全版・139分、DC版・191分と3種類あるようだが、一番短いオリジナル版でも、凝縮した戦闘シーン中心の作品になっており、じゅうぶんたのしめるだろう。(2020/11)
 ホワイトタイガー ナチス極秘戦車・宿命の砲火 (2012) BELYY TIGR/WHITE TIGER  ★★★/ 

監督:カレン・シャフナザーロフ
キャスト:アレクセイ・ヴェルトコフ、ヴィタリー・キシュチェンコ、ヴァレリー・グリシュコ、ヴラディミール・イリン

激戦続く東部戦線。戦闘が終了しドイツ軍が退却した戦場で破壊されたT-34/76から全身やけどの戦車兵が救出される。彼は驚異の回復を見せ完全に治癒するが、記憶がすべて失われていた。自分の名前するわからずとりあえず「イワン」と命名され戦車隊に復帰する。その頃たった一輌でソ連軍の戦車部隊を全滅させるドイツ軍の特殊戦車の存在が報告されていたが、イワンはなぜかその戦車の行動を感じることができた。そこでイワンは強化型T-34を与えられ、謎の戦車「ホワイトタイガー」を討ち取るため特別任務を課せられる。

 <ネタバレ>
AYA PRO配給である。これはかなりマニア向けの映画である。冒頭ドイツ兵らしからぬ制服の死体を見たソ連兵の会話…「こいつはルーマニア兵かイタリア兵か?」「いや、ハンガリーだ」の後方には武器貸与法により送られてきたマチルダ戦車の残骸といった演出。途中M-3リータンク(動かないが)も登場する。映画評を見ると肝心のタイガーがタイガーTに似てないというものもあるが、一台だけ作られた特殊車両という設定なので、ポルシェタイガーのさらに改良型とでも思えば問題なかろう。
終戦を迎えてもイワンは「奴はまだ生きてます」と言ってひとりT-34で走り去る。ホワイトタイガーは何を象徴したものなのだろう。見るたびに考えさせられる哲学的な一面を持ったシュールな作品でもある。 (2018.8) 
   ブレスト要塞大攻防戦  2010年 138分  ベラルーシ共和国,ロシア  ★★★★  
BRESTSKAYA KREPOST/FORTRESS OF WAR/THE BREST FORTRESS  

監督:アレクサンドル・コット 脚本:アレクセイ・デュダリェフ、ウラディミール・エリョミン、エカテリーナ・チルダートワ  音楽:ユーリ・クラサヴィン
キャスト:パーヴェル・デレヴィヤンコ、アンドレイ・メルズリキン、アレクサンドル・コルシュノフ、アレクセイ・ドミトリエフ

独ソ戦開戦時、ドイツは北、中央、南の三つの軍集団を構成していたが、その中央軍集団正面のモスクワへ続く街道の守りを担うのがブレスト要塞だった。要塞と言ってもそこは兵士だけではなく彼らの家族なども住んでいたので、包囲されてからの戦いは悲惨そのもの。女子供、老人、病人も容赦なく殺されてゆく。武器、食料、水が不足してゆく中、降伏を拒んだ者たちは無謀ともいえる攻撃で犠牲者の山を作ってゆく。組織的抵抗が終わるまでの5日間の戦いをリアルに描いた見応え十分すぎる一作。

<ネタバレ>
少しだけある空戦・空爆シーンはCGのようだが結構迫力。ドイツ軍戦車は4号戦車ぽいのが数両登場。足回りを見るとBMP歩兵戦闘車あたりの改造のようだ。物語は生き残った少年兵の語りで進み、老人となった現在を見せるエンディングとなる。無駄なだれるシーンもほとんどない見やすい作品。(2018/4)
 レニングラード 900日の大包囲戦 LENINGRAD   2009年 ロシア・イギリス  110分  

監督:アレクサンドル・ブラフスキー、キャスト:ミラ・ソルヴィノ、ガブリエル・バーン、アーミン・ミューラー=スタール

包囲下のレニングラードと、巻き込まれてしまった英国特派員女性の物語。耐久生活を送るレニングラード市民は細かく描かれている。

<ネタバレ>

海外(西側)の報道陣がレニングラードに取材のためモスクワから飛行機で来るが、ドイツ軍の空襲でちりじりになり主人公の女性は助かるが、死亡扱いとなる。そして彼女を助けるソ連軍女性兵士や同居する子供たちとの心の交流が始まる。しかし彼女の父親は、イギリスに亡命した元白軍の将校だったことが判明。ソ連側は彼女を送り込んだのはイギリスの謀略ではないかと勘ぐり捜索を続ける。一方包囲が続いた市内は食料が底をつき、餓死者も続出する。…というまじめな映画だが、見ていて戦闘シーンが全然ないのでどうでもよくなってきて、さらにヒトラーが余りに似てないので脱力してしまう。
冒頭のみ戦闘シーンがあり、PT水陸両用戦車かZTPU対空自走砲あたりを改造した感じのV突と、ほんものらしいルーマニア製38t戦車が出てくる。途中繰り返しMe109E(この時期はF型だと思うが)による空爆があるが、CGがとてもアニメっぽくて残念。
ラドガ湖を補給路に使うため凍った経路を苦労して探すシーンなどもあり、コアな東部戦線ファンは見てもいいかもしれない。(2012/10)
 レニングラード大攻防 1941  POROKH/GUNPOWDER(黒色火薬)   1985旧ソ連 88分 ★★    (東部戦線ソビエト映画)

監督:ヴィクトル・アリストフ、キャスト:ユーリ・ベリャーエフ、スヴェトラーナ・ブラガールニク、ニュボーフィ・カリューシュナヤ

包囲されたレニングラード。大砲も銃もあるが火薬が底をついた。郊外に火薬が貯蔵してあるが、種類もばらばらで古いのもあり、それらをどう調合したらいいか専門家でなくてはわからない。そこで選ばれた主人公は、数人の護衛を伴い船で出発。ドイツ軍の攻撃をかわしながらひたすら火薬を守り、レニングラード帰還をめざす。プロバガンダ色もなく、テーマを一点に絞り込んだ意外な感動作。

<ネタバレ>

劇場未公開旧ソ連製映画。どうでもいい感じの邦題。パッケージデザイン。どれをとっても期待薄の映画だったが、見事に裏切られた。2回繰り返し見てしまった。吹き替えもなかなかいいので、原語+字幕と交互に見てしまった。
主人公はいかにもお堅い役人風。ただただ火薬の運搬に執念を燃やす。やっぱり退屈なソ連映画かなと思ってみていると、ほのぼの&陽気な人物たちが周囲に登場し始め雰囲気が変化し始める。粒子の粗いカラー映像も、時に油彩画のような味わい。ジム・ジャームッシュアキ・カウリスマキ映画のようなテンポもいい脱力具合。そんな中、いよいよドイツ軍の猛攻で主人公も海に放り出されるが一命を取りとめ、火薬の運搬も成功。家に戻ってみると主人公を捨てて別の男に走った元の女房が。男が戦死し行き場を失い、転がり込んでいたのだ。死んだ男が忘れられないと泣く女。「生きる意味がないの…ファシストに勝とうが、ヒトラーを殺そうが、あの人は帰ってこない。」やさしく見守っていた主人公は声をかける。「生き続けてみろよ、死ぬことはいつでもできる、もう一度やり直してみようよ」というわけで嬉しく予想を裏切ってくれる感動の一作。…とはいえ、ある程度はソ連映画に免疫がないときついかも。「ヨーロッパの解放」全5部作を最低5回は見ておいてほしい。あと「ストレンジャー・ザン・パラダイス」や「過去のない男」あたりが好きな人にもお勧め。(2012/7)
 北極圏対独海戦 1944  TORPEDONOSTSY/TORPEDO BOMBERS  1983年・ソ連  91分     

監督:セミョーン・アラノヴィッチ、キャスト:ロディオン・ナハペートフ、アレクセイ・ジャリーコフ、アンドレイ・ポルトネフ

原題は魚雷戦隊(雷撃隊)。北極海に進出してくるドイツ海軍を迎え撃つ、ソビエト海軍航空隊の活躍。80年代の旧ソ連B級映画だが、魚雷を搭載したイリューシンIl−4が登場する、極一部のコアなソビエト空軍マニア向け作品。

<ネタバレ>

初めの方と最後に2回空爆シーンがある。間は隊員たちの日常と、身内のごたごたなんかがあるんだけど何か退屈で。吹き替えもあまり良くなくて、とにかく吹き替えにするとバックの音が小さくなるので迫力が全然ない。普通にロシア語+日本語字幕で見たほうがよいです。後半で女性や子供が船で避難することになり、港でたっぷり別れのシーンがあり、そのあとドイツ艦隊接近の報に雷撃隊が出撃。途中でその船が撃沈されているのを発見。仇をとってやる!と決死の攻撃でクライマックスとなります。空爆に登場するのはIl−4。使いやすい優秀な爆撃で戦後もしばらく現役だったという。魚雷を積んだタイプも実際にあったが、このような戦いが実際に繰り広げられたのかは不明。つまりドイツ海軍がこんなに北上したのかどうか。武器貸与法によってイギリスからソ連に向かった船団を、Uボートが攻撃し、イギリス空軍が出撃したという記録はたくさんあるが…。
このころのソビエト映画は(「ヨーロッパの解放」でもそうだったが)カラーとモノクロの併用。それにいろんな記録フィルムも使用され、そこにミニチュアの特撮が入って、なんともつぎはぎ映画って印象。特撮シーンは円谷プロの初期のウルトラマンのレベルで、それが妙に懐かしかったりして。
そのほか唐突にべリエフ飛行艇が優雅に飛ぶ姿もあり。また飛行場にはほかにも見たことない飛行機が並んでいる。記録フィルムにはSu-2やら別の飛行艇やら出てくるし、飛行場で爆弾をソリに乗っけてトナカイが運ぶ!という珍しい場面もあり。また迎え撃つドイツ海軍艦艇の対空射撃シーンもなかなか他では見れないもの。というわけで映画としては退屈きわまりないが、コアなマニアは見て損はないかも。(2012/7)
 レニングラード攻防戦T 1974年ソビエト  124分
監督:ミハイル・エルショフ、出演:ユーリー・サローミン、イリーナ・アクーロワ、エフゲニー・レベチェフ

こちらはまだ見ていません、ビデオで別々に購入したので。
レニングラードが包囲されるまでの戦いで、JS−Vが登場するらしい。
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 レニングラード攻防戦U・攻防900日 
1974年ソビエト  200分  
監督:ミハイル・エルショフ、出演:ユーリー・サローミン、エフゲニー・レベチェフ 

レニングラードで包囲された兵士や市民の苦悩を描いた、地味な一作。

すでにレニングラードが包囲された状況からスタートするのであまり戦線に動きはなく、市内に落ちる砲弾がそれも単発で、ひたすら困窮する市民の姿が中心。しかし包囲とはいえ(地図を見ないとわかりずらいが)ラドガ湖は完全に凍ると陸地と化すので、湖の東側も押さえなくてはならないという事で、独軍は攻めるが逆に押し返され、全面的な反攻に移るところで映画は終わる。
200分の大作だが、後のほうでやっと地味な戦闘が始まる。実写フィルムの使用も多い。海軍も借り出された防衛戦だったので、水兵が混じっているところは面白い。戦車は珍しいT−44T−44改造4号戦車(?)…といっても派手な戦車戦もない。
…こうしてみると同じソビエト映画でも「ヨーロッパの解放」は見やすい映画だったなぁ、と改めて感心。(2006/10)
 鬼戦車T‐34  ZHAVORONOK(SKYLARK) 1964年ソ連 モノクロ90分   ★★ 

監督:ニコライ・クリーヒン、出演:ヴァチェスラフ・グレンコフ

ドイツ軍砲兵の演習地で動く標的となったソ連捕虜が、T-34を乗っ取ってドイツ領内を逃げる、逃げる。一台の戦車を嘗め回すように楽しめる不思議な味わいを持ったお薦めのソビエト映画。

死んだ兵士たちを偲ぶ歌をバックに、戦没記念碑が映るオープニング。いかにも古いソビエト映画っぽいが、本編の方はなかなかお薦めの一品。しかも実話の映画化という。
ソ連の捕虜がドイツ国内の演習場で標的となってT−34を操縦する。対戦車砲が命中して戦車から脱出すると、機関銃で撃ち殺される。(こんなひどいこと行われていたのか?)どうせ死ぬなら…と主人公はわずかの隙をついて戦車ごと脱走!しかし所詮砲弾もないただの戦車。ソ連国内へ逃げ帰られるわけもなし…。
この映画の最大の見所は、全編にわたってその姿を(内部までも)さらしてくれるT-34/76、1943年型。映画に出てくるT-34というと普通はT-34/85だから、この映画はそれだけでも貴重。しかも砲塔の下部が波打ってるのでチェリアビンスク、キーロフ工場産だろう。(タミヤからプラモ発売中)
そのほかT-34/85も出てくるし、演習場のシーンでは、あまり見かけない対戦車砲も見れるので要チェック。(なお物語りは開戦からちょうど1年目という設定なので、1943年型もT-34/85も史実上は間違いだが)
ソ連映画にしては重苦しさやプロバガンダ臭さも少なく、戦場とはまったくかけ離れた風景の中を一台の戦車が走り回るという、軽妙なテーマ曲とも相まって不思議な味わいを見せてくれる異色作。
なおほんの一瞬だが、Do217の実機らしきものが横切るシーンがあるので見逃さないように。(2007/8)
 僕の村は戦場だった  1962年ソ連   94分  
  IVANOVO DETSTVO/MY NAME IS IVAN/IVAN'S CHILDHOOD

監督:アンドレイ・タルコフスキー、出演:コーリャ・ブルリャーエフ、ワレンティン・ズブコフ、E・ジャリコフ

両親を亡くした12歳のイワン少年。ドイツ軍と戦いたいがもちろん兵士にはなれない。しかし子供の特性を生かし偵察任務などで活躍、ソ連兵のマスコットのような存在になる。戦争の重々しさの中にも子供の目線でみずみずしい味わいも持たせたソ連映画の名作。

<ネタバレ>

60年代のソ連製モノクロ映画。派手な戦闘シーンもないし、音楽も地味。人によっては途中で退屈、あるいは見るのやめてしまうだろう。だが静けさの中で淡々と進んでゆく描写が逆に新鮮、と感じられればはまる。ソ連の国策映画にはない不思議な世界感。偵察任務では、あからさまにドイツ軍を出さないことで緊張感を生んでいる。戦争のいつ頃の話かわかりにくいが、ソ連軍が反攻に転じている時期で、最後はベルリン陥落で物語りは終わる。
そのベルリン陥落シーンはニュースフィルムが多用され、それまでの流れを切るような唐突さだが、最後の任務で行方不明になったイワンの消息がそこで判明するという渋いエンディングになっている。  (2009.8)
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