西部戦線 (’60年代作品)

 レマゲン鉄橋 The Bridge At Remagen ‘69米 116分 ★★★ 

ジョージ・シーガル、ベン・ギャザラ、ロバート・ボーン他。
1945年3月、ライン川に迫るアメリカ軍は、落とされずに残る一本の鉄橋を発見した。ライン川西岸に残されたドイツ軍の脱出路であり、連合軍にとってはドイツ本土への突入経路。両軍の戦いを両軍から描いた快作。

<ネタバレ>
米独両軍の戦いぶりを公平に描き、勢いで押しまくるアメリカ軍と、末期症状のドイツ軍の対比がみごと。ドイツ軍が全部英語だったり、擬似夜景シーンがあったりいかにも60年代のアメリカ映画ではあるが、終戦の年の西部戦線を描いた映画自体が少ないので貴重である。M4シャーマンは用意できなかったようだが、代わりのM24は正しい配役である。
ドイツ市民に対するアメリカ軍がけっこう非情だったり、ロバート・ボーンのドイツ将校がかっこよすぎて、負け役でもドイツ軍ファンは大満足。(2006.7)
 脱走山脈 HANNIBALBROOKS 1968英 102 分  ★★

監督: マイケル・ウィナー、出演: オリバー・リード, マイケル・J・ポラード
空襲の激しくなったドイツ国内の動物園から、飼育係(主人公)が像を脱出させる。といってもいきなり脱走ではなくちゃんとドイツ兵の護衛(監視)付だが、この護衛役も戦争の空しさを感じ飼育係に同調、スイスへの脱出を計る。

<ネタバレ>
ユニーク異色な物語で、有名な映画だ。牧歌的な山々の景色がそのサントラともあいまって全編にわたって描かれているが、けっこう非情な一面もあって、意外なところで登場人物が死んでしまったりする。山岳地帯ならではの戦いの妙味。変り種ほのぼの戦争映画としてお薦め。(2007.1)

 荒鷲の要塞  WHERE EAGLES DARE 1968年  160分 ★★

監督:ブライアン・G・ハットン、出演:リチャード・バートン、クリント・イーストウッド、メアリー・ユーア
ノルマンディー上陸作戦の概要を知る米将軍がドイツ軍に捕らえられた。スイス国境近くの荒鷲の城と呼ばれる要塞に収容された将軍を救出するために、少人数のエキスパート部隊が大作戦に挑む。典型的な60年代アクション巨編。

<ネタバレ>
全編に渡って雪山のシーンが続き、アクションも満載。Ju‐52(実機)からのパラシュート降下、ロープウェー上での格闘、飛行場の戦闘機を破壊しまくりながらの逃走シーン。そこは60年代の映画なのでこれでもかと盛りだくさんで、ドイツ軍はばたばたやられるが、ドイツ軍の撃つ弾はまるで当たらず、こんなところになんでこんな美人がって感じで女も出てくるしで困ったもんだが、R・バートンとC・イーストウッドなんだから割り切って楽しもう。
なお、最初から何か裏がありそうなサスペンスタッチで物語りは進み、最期に謎が解けるという楽しみもあり。
(2008.10)
 特攻大作戦 THE DIRTY DOZEN 1967米 150分  ★★
 
監督:ロバート・アルドリッチ、出演:リー・マーヴィン、アーネスト・ボーグナイン、ジム・ブラウン、チャールス・ブロンソン、ジョージ・ケネディ、テリー・サラヴァス、ロバート・ライアン、ドナルド・サザーランド
絞首刑や懲役30年などの重罪を犯した兵士ばかりを集め、ドイツ占領下のフランスへの危険な作戦を行うというアクション映画。

<ネタバレ>
とにかく主役をやれそうな俳優がごっちゃり出てるのにまずびっくり。派手なメカの登場はないが、ハーフトラック、ジープ、野砲、輸送機なども単にわき役として贅沢に使われているし。
前半は訓練&演習での任務テストのシーンでかなりおふざけも入るので、最後までこの調子じゃ疲れるかなぁ…と思いきや、本編作戦任務では結構シビアな展開。女も容赦なく殺すし、味方にもどんどん犠牲者が出るしで、その狂気のギャップを味わうためにも前半我慢してみるべし。
「プライベートライアン」以降のリアル系戦争映画になれた昨今だが、たまには理屈抜きのアクションものも…という人にはオススメの一作。(2008.3)
 誇り高き戦場  COUNTERPOINT  1967年  106分 

監督:ラルフ・ネルソン、原作:アラン・シリトー、音楽:ブロニスラウ・ケイパー、脚本:ジェームズ・リー 、ジョエル・オリアンスキー 出演:チャールトン・ヘストン、マクシミリアン・シェル、キャスリン・ヘイズ、レスリー・ニールセン、アントン・ディフリング
ヨーロッパ戦線で慰問活動中のアメリカの交響楽団が、バルジの戦い(ラインの守り作戦)に巻き込まれドイツ軍の捕虜となる。非戦闘員に対するドイツ軍に扱いに対抗してゆく楽団員達の結末は…。

<ネタバレ>
C・ヘストン演じる楽団長は脱出計画を練るのだが、楽団員夫婦(C・ヘイズ、L・ニールセン)との三角関係あり、M・シェル演じる音楽に造詣の深いドイツ軍指揮官との維持の張り合いあり。その他陸軍司令部の命令を厳守し指揮官に歯向かうドイツ将校にA・ディフリングと、見覚えある俳優多数出演。1967年というと戦争映画が作られまくった年だが、こんな映画あることまったく知らなかった…という確かに地味な作品。
M7プリーストが大量に並んでるシーンはあるがまったく動かず。アメリカのM4ハーフトラックの車体側面を凸凹に切り込みいれて、ドイツの5tKfz6みたいにしてる。  (2009.7)
 パリは燃えているか  IS PARIS BURNING? 1966米仏 モノクロ2時間50分  ★★★

監督:ルネ・クレマン、出演:ジャン・ポール・ベルモント、シャルル・ボアイエ、アラン・ドロン
オーソン・ウェルズ、イブ・モンタン、グレン・フォード、アンソニー・ホプキンス
迫り来る連合軍。遂にパリを手放し撤退するドイツ軍。ヒトラーはパリを焼き払えと命令するが、現地司令官は葛藤する。

<ネタバレ>
ヒトラー暗殺未遂3週間後という設定で、パリ守備隊指揮官コルディッツ将軍がヒトラーから、「パリが占領されそうになったら焼き払え」と命令される場面からスタートする。このシーン、さすがにヒトラーが英語をしゃべるのはまずいという配慮からかドイツ語だが、その後はドイツ兵もフランス人も英語となる。ほぼモノクロでニュースフィルムなども交え、ドキュメンタリータッチで描かれるこの映画は、パリが解放される前後を知る上で貴重な一作。
前半はレジスタンスの活動、後半は連合軍の登場でいよいよ解放となるので、全体として戦闘シーンは少ない。しかし実際にパリでロケされたそうで、そう思って見るとすごいものがある。珍しいいフランス軍ホチキス戦車(独捕獲車両として)M4シャーマンM24改造パンサーなどが登場。よくできているがいかんせん寸足らず、“パンサーチョロQ”みたいでかわいい。普段あまり戦争映画でお目にかからないフランス人スターが勢ぞろいです。(2006.10)
 バルジ大作戦  Battle Of The Bulge 1965米 175分  ★★

ヘンリー・フォンダ、ロバート・ショー、チャールズ・ブロンソン、テリー・サバラス、ローバート・ライアン
'44年12月ドイツ軍の最後の賭け「ラインの守り作戦」こと「バルジ大作戦」を描いた娯楽映画。

<ネタバレ>
ドイツ軍にはキングタイガー役でM47、アメリカ軍にはM24が登場。M24の砲弾を“パカーン”とはじき返しながら進むM47はなかなか迫力。見ているうちにだんだんキングタイガーに思えてくるから不思議!

雪の中の戦闘シーンは悪くないが、ラストの戦車戦はまるでアフリカ戦線。独軍北翼のSS第一機甲軍から飛び出して進撃した「パイパー戦闘団」をモデルにしつつも、史実からかなりハズレた自由な作品。出演俳優は一流だが、映画の方はややB級。史実にこだわらず楽しみたい。(2006.7)
 ダンケルク  WEEK-END A ZUYDCOOTE  1964仏  132分  ★★  
監督: アンヌ・ヴィルヌイユ、出演:ジャン・ポール・ベルモンド, カトリーヌ・スパーク
1940年5月に始まった西方電撃戦によってドイツ機甲師団は瞬く間にフランスを横断。5月27日にカレーが陥落、英仏軍は完全に包囲された。その直前の二日間を描いた「ズィド海岸の週末」という原題の映画。包囲され脱出を待つフランス兵たちの地味な物語。

<ネタバレ>
ドイツ陸軍と戦っている後衛部隊ではなく、包囲され、なすすべもなくただ乗船の順番を待つ兵士達の物語なので、あまり派手な展開は期待できない。包囲軍に対する攻撃もドイツ空軍に任されていたので、例によってMe‐108が登場。低空で飛来する様はなかなか迫力だが、ドイツ陸軍は出てこない。
だが、フランス俳優によるフランス語のフランス軍の映画というのは少ないので、その意味では捨てがたい作品。大量に破棄されたトラックや、さりげなく擱坐しているルノーR35戦車など、海岸に追いつめられた軍隊の雰囲気はよく出ている。爆撃や砲撃の中、若くて美しい女性が一人家を守っているという設定で、ベルモンドと「ほんとに結婚してくれるの?」てな関係になっていく流れは何とかして欲しかったが、それもフランス映画だからと割り切れば楽しめるかもしれない。
撤退準備中の英軍指揮官に、コンバット!の「停車場の三日間」で同じく英軍将校を演じたロナルド・ハワードが出ている。  (2009/12)
 大列車作戦  THE TRAIN   1964米 モノクロ131分

監督: ジョン・フランケンハイマー 、キャスト・スタッフ:バート・ランカスター、ポール・スコフィールド、ジャンヌ・モロー
1944年8月パリ。連合軍が近づき撤退の準備をするドイツ軍。有名な絵画をすべて持ち去ろうとするドイツ軍とそれを阻止しようとするフランス市民の戦い。

<ネタバレ>
梱包され貨車に積まれドイツ本国へと向かうゴーギャン、ゴッホ、ユトリロ、モネ。主人公はバートランカスター演じる機関士。元サーカス団員だったランカスターはここでもスタントマンを使わず、走る列車から飛び降りる身のこなしもお見事!
蒸気機関車が走る、停車する、脱線する、激突する!運転の細かな操作も描かれSLファンにもオススメ。はでなBGMもなく、蒸気音、汽笛、連結音などの繰り返しで映画のイメージを作り上げている。
ドイツ軍の車輌はM−24M−3ハーフトラックM−8グレイハウンドなど米軍のものだが、対空砲75ミリPak40などがさりげなく使用されている。連合軍との直接の戦闘はないが、撤退する舞台の描写は「レマゲン鉄橋」に通ずるものがあり、ドイツ軍ファンの胸を打つだろう。絵画を守るため死んで行く大勢の人々。ただ一般市民の英雄的行為をお祭り騒ぎで描いたアクション映画ではない。見ているものに戦争の空しさを問いかけて映画は終わる。
 36時間 ノルマンディ緊急指令  1964米 116分 モノクロ ★  

監督:ジョージ・シートン、出演:ジェームズ・ガーナー、ロッド・テイラー 、エヴァ・マリー・セイント
連合軍の上陸地点はどこか?…何とか連合軍捕虜から聞き出そうとドイツ軍は奇想天外な作戦を考え出す。

<ネタバレ>
主人公がJ・ガーナー、他の出演者にR・テイラーとB級路線ではあるが、とにかくその奇想天外な作戦とそれを見破る主人公、この展開が見もの。
終盤の丘の上の廃墟はTV「コンバット」でも何度か使用されてきた場所だ!(2007.1)



 大脱走  The Great Escape  1963年米 2時間48分  ★★★

監督:ジョン・スタージェス、出演:スティーヴ・マックィーン 、ジェームズ・ガーナー 、リチャード・アッテンボロー 、ジェームズ・コバーン 、チャールズ・ブロンソン、デヴィット・マッカラム
史実にもとづいた脱走映画の代表。

<ネタバレ>
重厚リアル系戦争映画「プライベート・ライアン」の登場で、かつてのハリウッドアクション娯楽大作はちょっとしらけて見れない気分になりがちだったが、これは別格。とにかくオールスター総出演、アイディア出し合い、助け合い、励ましあい、どこまでもどこまでも男の世界。多数のイギリス兵に混じってアメリカ兵3人という設定も楽しいし、ロシア兵まで出てくる。気弱で人がよさそうで、挙句の果て東部戦線送りになる収容所所長がまた、哀れを誘う。
結局大量の銃殺犠牲者の報が収容所に入り、重苦しい気分に包まれるが、我らがマックイーンのご帰還で収容所の面々と共に、観ている私たちも大きな感動を持って映画に別れを告げることができる。
そのマックイーンのオートバイ逃走シーンがもちろんの見せ場だが、今回「ミリタリーヒーローズ」を読み返してみたら、スピード狂の彼自らドイツ兵のスタントも買って出たのだという。つまりマックイーンを追いかけているドイツ兵の中にも、マックイーンがいると言うのだ!どれが彼なのか…新たな楽しみができました。サントラも凄くいいです。(2006.9)
史上最大の作戦 The Longest Day‘62米 179分 ★★★  

ジョン・ウェイン、ヘンリー・フォンダ、ロバート・ミッチャム、リチャード・バートン、ロバート・ライアン、ロッドス・タイガー、クルト・ユルゲンス、エドモンド・オブライエン他。
ノルマンディ上陸作戦の準備段階から上陸当日(Dデイ)までを、空前のスケールで描いた史上最大の映画。

<ネタバレ>
出演当時無名だったが、その後スターとなった俳優が繰り返しチェックされ、今では60人以上が確 認されている。オマハ、ユタ、スウォードの各海岸、オック岬、そして英米空挺作戦すべてを映し出しながら、そこで実際に起きた実に人間臭いエピソードも織り込んだ人間ドラマとなっている。
英語、ドイツ語、フランス語が正しく使われているのも嬉しい。またM4シャーマンDDタンク(水陸両用)など、今では見られなくなった珍しい車両も登場。後から着色されたカラー版も出ているが、やはり古典的名作は、白黒で見たい。(2006.7)
 突撃隊  HELL IS FOR HEROES 1961年  90分 モノクロ ★★★  

監督:ドン・シーゲル、キャスト:スティーヴ・マックィーン、ボビー・ダーリン、フェス・パーカー
第二次大戦末期、ジークフリートラインを攻撃する一小隊の物語。古いモノクロ映画だが、戦闘シーンはリアルで見応え充分。


<ネタバレ>
そろそろ戦争も終盤、帰国の命令を今か今かと待つ兵士達。そこへ前線への出撃命令が下るという設定ににんまり。竜のきばが並ぶジークフリートラインの風景も新鮮。
マックィーン演ずる主人公は、軍規は守らないがひとたび戦闘となれば最強の兵士に早変りする、上官が一目置く存在。装備するのは珍しいM3グリースガンで、それを扱う細かい描写はマニアックすぎるほど。ただあまりにも寡黙で、過去に何があったのかちょっと説明不足だし、マックィーンファンには物足りないかも。1962年という比較的初期の作品で、唐突なエンディングも逆にドキュメンタリー映画のような迫力をかもし出している。
なお人気TVドラマ「コンバット!」の傑作「丘は血に染まった」の原題「HILLS ARE FOR HEROES」はこの映画から取ったものに違いない。それから友人からの情報だが、ジープで道を間違えて途中から部隊に入れられてしまう若い兵士がいるが、ポール・ニューマンだそうだ。(2011/3)
  ニュールンベルグ裁判  JUDGMENT AT NUREMBERG/JUDGEMENT AT NUREMBERG   1961年 194分  ★★

出演:スペンサー・トレイシー、バート・ランカスター、リチャード・ウィドマーク、マレーネ・ディートリッヒ、ジュディ・ガーランド、マクシミリアン・シェル
監督:スタンリー・クレイマー、製作:スタンリー・クレイマー:脚本:アビー・マン、音楽:アーネスト・ゴールド
第二次大戦終了から3年。勝者連合軍による敗者ナチスドイツの戦争責任を追及する裁判が行われた。この映画は軍人が裁かれた第一回裁判ではなく、法律家、外交官などが裁かれた第2回裁判を描いている。裁判長にスペンサー・トレイシー、被告の世界的な法律家にバート・ランカスター、検事役がリチャード・ウィドマークで弁護役が(ドイツ軍将校役でおなじみ)マクシミリアン・シェルというものすごい裁判劇になっている。

<ネタバレ>
裁判といってもここでの特色は、戦時中のドイツ国内法を戦後に勝者連合軍が国際法によって裁くという特異性にある。そのテーマの重さと難解さに双方とも苦しい表情に変わってゆく。なかでも裁判長の悩み苦しむ姿が見もの。またソ連による西ベルリン封鎖という事態が発生。政治的圧力がさらに当事者たちを追いつめる。
そんな見ごたえあるドラマだが、一流の役者ぞろいゆえに弁論シーンの完璧さがあまりに舞台劇風で、ちょっとしらける人もいるかもしれない。また設定上は英語とドイツ語の応酬なのに、映画はすべて英語でやり取りされているので、通訳を聞くためのヘッドホンをいちいち耳に当てる演技が不自然でちょっと残念。
なお人気TVドラマ「コンバット」で、いつもやられ役のドイツ兵を演じているポール・ブッシュがドイツ人運転手役で出ているので、お見逃しなく。(通訳席にいるのは同じく「特攻ギャリソンゴリラ」で金庫破りのカジノを演じたルディ・ソラーリみたい) (2012/5)

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