日本映画 太平洋戦争  90年代までの作品

 八月の狂詩曲(ラプソディー) 1991 98分  

監督:黒澤明、原作:村田喜代子、音楽:池辺晋一郎、脚本:黒澤明
出演:村瀬幸子、井川比佐志、茅島成美、大寶智子、伊崎充則、リチャード・ギア

これを戦争映画として紹介するのは無理があるかもしれない、長崎の原爆をテーマにした反核映画である。夫を原爆でなくした老婆と、その4人の孫、そしてアメリカ人の甥っ子の心の交流を描く。

舞台は長崎とその郊外の田園地帯であって、あくまでも静かな日常が淡々と描かれる。子供達の演技がまず受け入れられるかどうか決まりそうな映画である。ラストシーンが美しく、黒沢はこれを最初に思いついたのではないかとも思えるものだが、そこにいたるまで全編あまりにも教科書的で退屈。ラストシーンとのギャップを感じるほど。

(2009.4)

 黒い雨 1989年 123分 ★★

監督:今村昌平、原作:井伏鱒二、出演:田中好子、北村和夫、市原悦子、三木のり平

ラストに悲劇が待っているのは見たことない人にもわかる映画で、物語は原爆投下の8月6日からいきなりスタート、悲しみのどん底へ向かって一直線という映画である。投下直後の広島を描いた映画は少なく、迫力はイマイチとはいえやはり日本人には辛い。
空襲警報がやんだあとに投下されたということがさらっと出るが、B−29は一旦通り過ぎて引き返して来て、人々が防空壕から出てきたところを狙ったのである。また、わりと新しい映画なのにモノクロなので、もっとずっと古い映画に見えてくるが平成元年である。

それにしても公開当時のことはまったく私は記憶にないが、元キャンディーズのスーちゃんがここまで(入浴シーンやラブシーン)やってるとは知らなかった。スーちゃんファンにはさらに辛かったろうと想像する。
(2008/11)


  TOMORROW 明日  1988年 105分   

監督:黒木和雄、キャスト・スタッフ:桃井かおり、南果歩、仙道敦子、佐野史郎

長崎に原爆が落とされた8月9日。その前日に普通の人々が生活する姿だけを淡々と描くことで、戦争の悲惨さを表そうとした一作。

政府や軍部、ましてやアメリカの動向等は一切出さず、普通の人々が未来に不安を持ちながらも、ひたむきに一日を生きぬこうとする姿だけを細かく描いている。それはそれで見応えあるし評価も高い作品だが、何も答えは示していないともいえる。原爆の恐ろしさを描いたものとも言い切れない。この様に平凡な生活が一変してしまうのは、原爆に限らず戦争の様々な場面に存在する。戦争がいかに空しいもので絶対悪だというメッセージだとしても、なぜ繰り返すのか、何が原因なのか、誰が悪いのか、誰に向かってメッセージを発しているのか、それは映画からは伝わらず、あとは見た人が考えてください、と言っているようだ。
映画はヒロインが爆音に気づき、空を見上げた次の瞬間原爆の実映像が入って終ってしまう。問いかけだけでも意味がある映画だ、と言われればそれまでだが。
実際は長崎では空襲警報が鳴り、防空壕で助かった人もいるのだが、こういう描き方をしたほうが効果があると考えたのかもしれない。ストレートなメッセージは押さえるといういかにも日本的な映画ともいえる。
また後になって気づいたのだが、この映画は字幕もナレーションもなく状況説明がない珍しい映画で、歴史事実を知らない人はお手上げかもしれない。つまり“日本が連合国を相手に戦って負けた第2次世界大戦の終戦の直前に、アメリカによって長崎に落とされた原爆の話で、原爆というのは従来の爆弾に比べとてつもない破壊力があり、きのこ雲を発生させる”ということを知ってる人だけが結末から登場人物たちの死に想像をめぐらし、はじめて感動できる映画であるともいえる。(2011/3)
 ビルマの竪琴  1985年  133分  

監督:市川崑、出演:石坂浩二、中井貴一、川谷拓三

1956年に一度映画化された竹山道雄の同名小説を同じ市川崑監督で再映画化。日本兵の霊を慰めるため、僧侶となってひとりビルマの地に残る兵士の姿を描く。1945年夏。ビルマ戦線の日本軍はタイ国へと苦難の撤退を続けたていた。そんな逃避行の最中、井上小隊長率いる部隊は、みな音楽好きで水島上等兵の弾く竪琴の音に合わせ力強く合唱していた。やがて終戦を知った彼らは投降し、ムドンに護送されることになったが、水島だけは未だ抵抗を続ける日本軍に降伏を勧めるため隊を離れるのだが……。
終戦まぎわのビルマ(現ミャンマー)で物語りはスタートするのでほとんど戦闘シーンもないまま終戦、降伏となる。主人公水島が別の部隊に降伏勧告説得に向かう場面で一戦あるが、そこまで。
粗末な材料で作ったはずの竪琴の音色がきれいすぎるのは目をつぶるとして、兵隊達の会話がどうしても学芸会風で困ってしまう。みんな声もよく通るうえはきはきと歯切れよく、とても敗走に敗走を重ねたあげく捕虜になった日本兵という感じがしない。イギリス兵や現地ビルマ人の演技が自然でいいけど、ビルマのおばあちゃん役もいいのか悪いのか、ビルマ人の俳優使って欲しかったなぁ。あとイギリス兵も歌うシーンがあるんだが、インド植民地軍兵と肩組んで歌ったりしたか?…わかりません。 
    ゼロ戦燃ゆ 1984年東宝 128分 

監督:舛田利雄、原作:柳田邦男、脚本:笠原和夫、キャスト:堤大二郎、橋爪淳、あおい輝彦、目黒祐樹、早見優、南田洋子、加山雄三、丹波哲郎(山本五十六)

太平洋戦争開戦前、横須賀海兵団に入隊した浜田(堤)と水島(橋爪)。パイロットと整備員として働く二人を通して、終戦までのゼロ戦の戦いぶりを描いた80年代東宝の大作。

80年代日本映画の例にもれずオールスターキャスト。エピソードも無名のパイロットから山本五十六まで盛りだくさんに詰め込んだお決まりのパターン。はじめは無敵だったゼロ戦だが、アメリカ軍の新型戦闘機と戦術の前に劣勢になってゆくさまはわかりやすく描かれている。しかし80年代の作品なので、肝心の空戦シーンもミニチュアとラジコン?で現在の感覚ではさすがにきびしいものがある。あくまで好きな俳優さん目当てで見たほうが無難。 (2015/9)

 あゝひめゆりの塔  1968年日活 127分  

監督: 舛田利雄、出演: 吉永小百合, 浜田光夫, 和泉雅子, 二谷英明, 乙羽信子

始めの方は男女学生の平凡な日々が描かれるが、意外と早く米軍接近の報で緊迫感につつまれ、あっという間に地獄へ突入してゆく。戦い自体は悲惨以外の何物でもない。敗走敗走の連続。アメリカ兵そのものは映らず、空爆、砲撃、銃撃のみに負われてゆく日本人は惨めである。

女学生達が生の実感を確かめるように合唱するシーンが繰り返しあるのでやや疲れるが、ラストシーンはなかなか強烈で、見終わったあとは重苦しい気分になる。軍にも民間にも「降伏」の二文字はないという狂気。なぜこの時代の日本人は当たり前にこのような行動をとったのか。事実は知っていてもあらためてその異常さに、やりきれない気持ちになる映画だ。ラストシーンは吉永小百合ファンにはきつかったんじゃないかな。
なお襲来する爆撃機役の実機は一式貨物輸送機(キ56)のようだ。ラストに出てくる戦車は(判別できないように)下部だけ映るが、61式中戦車と思われる。

(2008/8)
  日本のいちばん長い日  1967年 157分  ★★

監督:岡本喜八、出演:宮口精二、戸浦六宏、笠智衆、山村聡、三船敏郎、

敗戦の年の8月15日に至る経過を、特に14日から15日正午までの一日半をこれでもかと言うほど緊張感張り詰めたまんまで描く。終戦の玉音放送を阻止しようと企む一団、特に黒澤利雄演じる将校がずーっとハイテンションでセリフを叫び続けてややうんざりするのだが、それが最後まですーっと続きいつのまにかその気迫に飲み込まれている。
14日の深夜にこんなことがあったんだ、そして日本の歴史にこんな一日があったということを、くそ真面目なほど真剣に伝えようとしている。そしてこの映画の日本映画らしからぬすごさは、ほとんど女が出てこないことだ。どこまで男、男、男、男である。ただ放送局のアナウンサー役の加山雄三がどうも…「若大将シリーズ」のイメージ強すぎて。

(2007/12)



 ゼロファイター 大空戦   1966年東宝  92分  モノクロ(パッケージはカラーだけど) ★★  

監督:森谷司郎、特殊技術:円谷英二、キャスト:加山雄三、佐藤允、土屋嘉男

ブーゲンビル島ブインのゼロ戦航空隊。新しく着任した隊長・九段(加山)は常に合理的な思考方法を優先し、精神論を第一の上層部とぶつかるが、部下には次第に慕われてゆく。しかし戦局は悪化し続けガダルカナル周辺も米軍に制空権を奪われ、残存機数も一桁台になってしまう。海軍のガダルカナル逆上陸作戦が決定。残されたわずかなゼロ戦で作戦を援護すべく、決死の敵レーダー基地攻撃に向かう。

空戦、空爆シーンは円谷プロお得意のミニチュアによる特撮。それでも当時としてはかなりの迫力だったと思われる出来。実物大のゼロ戦は滑走のみだがいいできで、どこかで保存してないかな…スクラップだろうな。やたらと精神論を振りかざす上層部に真っ向からぶつかり、常に人命第一、作戦の合理性を追う主人公・加山雄三は見ていて気持ちいい。それに対し、いつもMAXテンションの佐藤允演ずる加賀谷は見ていて正直疲れる。

P-38
をばったばったと撃墜し、地上のB-17が機銃掃射だけで大爆発したり、新型3号爆弾で敵編隊を吹っ飛ばしたりなかなか無茶やってくれるけど、最後は多勢に無勢。無駄死にだけはするなといい続けてはみたが、みんなどんどんやられてしまう。個人がどうがんばってみてもどうにもならない戦況をシビアに描く、という普通の流れに最後はなってしまった。だがテーマは、最も血の気が多く真っ先に死んでいきそうな加賀谷が隊長の死を見届けた後「隊長…俺は帰る、俺は生きて帰るぞ!」と叫ぶラストシーンに込められているのかもしれない。(2012/7)
 ビルマの竪琴  1956日活  116分 モノクロ  

監督:市川崑、出演:三国連太郎、安井昌二、浜村純

私自身は子供の頃小説で読んで(教科書?)けっこう感動した覚えがある。
映画のほうはどうも日本映画にありがちな、交代でセリフを棒読みする学芸会的雰囲気があいかわらずで、感動は薄い。市川崑監督はカラー時代になって「どうしてもカラーでもう一度撮り直したい」ということで1985年に再映画化しているが、今となってはむしろモノクロ作品の方が味わいがあって、どちらかひとつというならこちらを薦めたい。(2008/11)





  日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声  1950東映 109分  ★★ 

監督:関川秀雄、キャスト:沼田曜一、杉村春子、

ビルマ、インパール作戦に従軍した学徒兵。そして偶然戦地で再会した大学時代の恩師。補給もとだえ、もはや軍隊組織として戦力もない集団。まともな戦闘行動も取れず、もちろん降伏もせず全滅の道をたどる。戦後わずか5年めに製作された反戦映画の古典的名作。

連合軍兵士がまったく出てこないのは残念だが、砲撃と降伏勧告の放送だけが繰り返される戦場は悲惨そのもの。時折挿入される出陣前の本土での思い出も効果的。過酷な状況を受け入れるさまも、兵士一人一人に違いが出ていてうまい。指揮官たちの傲慢で身勝手な行動も描かれていて、今でも充分見応えある作品。

(2014/8)

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