西部戦線  (2000年代の作品) World WarUWestern Front

 セントアンナの奇跡  MIRACLE AT ST. ANNA 2008年 アメリカ/イタリア 163分  ★★★ 

製作総指揮:マルコ・ヴァレリオ・プジーニ 、ジョン・キリク原作 ジェームズ・マクブライド、脚本:ジェームズ・マクブライド
出演:デレク・ルーク、マイケル・イーリー、ラズ・アロンソ、オマー・ベンソン・ミラー、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、マッテオ・スキアボルディ(少年)

郵便局で殺人事件が起きる。犯人の局員は元アメリカ兵、被害者は元ドイツ兵。そして新聞で事件を知って驚愕する一人の紳士。
3人を結ぶ過去の出来事とは…。


<ネタバレ>

第2次大戦ものも様々な角度からアプローチされるようになった。今回はアメリカ軍の黒人兵部隊。当然舞台はイタリア。ドイツ兵、レジスタンス、イタリア市民の複雑な関係があり、黒人として白人アメリカ兵からの差別も描かれ、ちょっと詰め込みすぎの嫌いはあり、2時間43分という上映時間もややきつかった。
「プライベート・ライアン」以降、現在と過去の時間的リンクが流行のようになり、この映画でもエンディングでまた現在に戻るのだが、私は不覚にもその瞬間すぐにストーリーを理解できなかった。結局誰が主人公だったのか?この紳士は例の子供だったとして何が感激の再会なのか?事件との関連は?ファンタジーのような場面もあるし、後半で負傷したアメリカ兵にドイツ将校が「護身用に」とピストル渡すのもちょっと解せないし…。
事実に基づいた話なので仕方はないけれど、やっぱり長すぎる映画、わかりにくい映画というのはヒットしないみたいだね。世間は正直。ただヒットはしなくても、ヨーロッパ戦線マニアは見て損はない。戦闘シーンそのものはそれほど多くないし、山岳地帯の一山村が舞台なので地味ではあるけれど、イタリア戦線らしさは充分味わえる。一般人がどんどん殺されるのも痛いし。でもぶっ通し見ると疲れます。  (2011/10)
 デイズ・オブ・グローリー INDIGENES/DAYS OF GLORY  2006年仏  119分  ★★★★ 
 
監督:ラシッド・ブシャール、出演:ジャメル・ドゥブーズ、サミー・ナセリ、ロシュディ・ゼム

フランスの植民地であったアフリカ諸国で志願し、フランス兵として戦ったアラブ人達。困難な任務につくが、成功すれば帰国し祖国の独立が実現すると信じて戦った兵士達の過酷な歴史を描いている。

<ネタバレ>

装備は基本的にはアメリカ軍スタイルだが、フランス軍のヘルメット、ライフルを使用する者や、イギリス軍のコートとヘルメットをつけている者もいたりするところが興味を引く。首や頭にターバンを巻いていてヘルメットをかぶり、アラーの神に祈りをささげ、イタリア、フランスと転戦してゆく。全体的に沈んだトーン。民俗音楽も効果的に挿入される。ラストの戦闘とエンディングシーンがなんとも「プライベート・ライアン」っぽく仕上がってしまってるが、兵士達の葛藤とリアルな戦闘シーンがテンポよく進み、最後までだれないで見ることができる。
2002年に至るもアラブ人に対する軍人恩給の支給を渋っている政府を、ラストの字幕で非難している。フランスもけっこうえげつないことしてるんである。「命の戦場」もそうだったが、こういうフランス映画が増えてきたのはいいことだ。(2010/1)
  ドレスデン/運命の日  DRESDEN   2006年独  150分  ★★   

監督:ローランド・ズゾ・リヒター、キャスト:フェリシタス・ヴォール、ジョン・ライト、ベンヤミン・サドラー

戦争末期、ドレスデンに行なわれた英空軍による無差別爆撃。ありふれた日常を暮らす一般市民が、たった一夜の爆撃に無残に飲み込まれてゆく。

<ネタバレ>

ドイツ映画である。
アブロ・ランカスターは1980年代においてもフライアブルな機体が一機あったが、ここでの映像はCGっぽい。また近年の映画には珍しく発着シーンなどに実写フィルムをまじえている。男女の三角関係や、英軍のパイロットがうまくドイツの日常に紛れ込んじゃう場面に「あれっ?」というところがあって好き嫌い分かれそう。実はこの映画も(Uボートと同じように)テレビドラマを再編集したものだそうで、一本の映画にいろんな人間ドラマを詰め込みすぎた印象があるのは否めない。ラストに現在のドレスデンの映像が入るのも、どうかなぁ。…製作者の主張がここにあるのはわかるけど。 (2010/11)
  極寒激戦地アルデンヌ 〜西部戦線1944〜  SAINTS AND SOLDIERS    2003年 90分    ★★

監督:ライアン・リトル、出演:コルビン・アルレッド、 ローレンス・バグビー、 カービー・ヘイボーン

マルメディの惨劇から辛くも逃れた4人の兵士。武器はドイツ兵から奪ったライフル一丁、弾4発のみ。途中、撃墜された英空軍偵察機のパイロットを助けるが、彼はドイツ軍の移動経路について重要な情報をつかんでおり、一刻も早く味方戦線にたどり着きたい。バルジの戦いのほんの一面を切り取った地味な映画だが、細部までていねいに作りこんだ良質な一作。

<ネタバレ>

例によって派手ないただけない邦題である。バルジの戦いの全体像は描かれていないし、登場する車両もハーフトラックとジープくらい。もちろん“M47キングタイガー”なんか出てこない。でも兵士たちの服装、装備はなかなかのもの。独にドイツ軍ファンは嬉しい、SS迷彩セミオートG43やら突撃銃MP44やら。前半はひたすら身を隠しての移動で、ストレスが溜まる。後半はいよいよ敵戦線突破ということで戦闘開始!…だけどまぁ〜抑えた感じで。でもこの抑え具合がちょうどいいんだよな〜。捕虜にしたドイツ兵が旧友だった、という偶然過ぎる出会いがちょっと気になるけど、「これは事実に基づいた物語である」そうですから、事実なのかな。全体的なボリュームは「バンド・オブ・ブラザース」の中の一話くらいのもんですが、兵士同士の会話、ドイツ兵やかくまってくれた農家のベルギー人主婦とのやり取りなど、一こま一こまにリアリティーがあって、好きな人にはお宝になるであろう作品。
なおマルメディの一件は真相は不明で、脱走しようとした兵士を射殺したところからパニックになり、一斉に銃撃が始まったという説があり、この映画でもそのように描いている。(2012/9)
 バンド・オブ・ブラザース〜男たちの深い絆  2003米  合計10時間25分   ★★★ 

スティーブン・スピルバーグ、トム・ハンクス製作総指揮
出演:ダミアン・ルイス, ドニー・ウォールバーグ, デヴィッド・シュワイマー, スコット・グライムズ

第101空挺師団・506連隊・第2大隊E中隊。実在した部隊を一人一人実名のまま描いた、10時間に及ぶTVシリーズ。

<ネタバレ>

「プライベート・ライアン」で大もうけしたのか、新種(新作?)の戦車も登場。V号突撃砲X号ロンメルなんかは映画初登場じゃないか?
連合軍側もM4だけでなくクロムウェル参加が実にリアル。戦車が被弾した時の描写も新鮮で「…ああ、実際はこんなだったんだろうなぁ…」と感激もの。リアルさの追究では空挺隊員の降下時の個人装備もすばらしい。
物語の中心は2〜7話。ノルマンディ降下、マーケットガーデン作戦、バストーニュでの奮戦と、映画3本分楽しめる。でも、本国での訓練主体の1話、終戦前後のドイツを描いた8〜10話ももちろんお薦めです。(2006.8)

 コレクターズ・ボックス T   DISC 1〜2:本編(250分)/特典ディスク1枚(約180分)
第1話「翼のために」
第2話「ノルマンディ降下作戦」
第3話「カランタン攻略」
第4話「補充兵」

 コレクターズ・ボックス U   本編ディスク3枚(375分)
DISC 1:第5話「岐路」第6話「衛生兵」
DISC 2:第7話「雪原の死闘」第8話「捕虜を捉えろ」
DISC 3:第9話「なぜ戦うのか」第10話「戦いの後で」

 ジャスティス Hart's War 2001年米 125分 ★★

監督:グレゴリー・ホブリット、出演:ブルース・ウィルス、コリン・ファレル、マーセル・ユーレス

1944年12月のアルデンヌ。ドイツ軍捕虜収容所で起こった殺人事件に対し、米軍捕虜による収容所内裁判が行なわれる。

<ネタバレ>

12月16日アルデンヌ。つまり「バルジ大作戦」開始日である。主人公は親のコネでのんびり軍団司令部勤務する将校。しかし独軍の攻勢に巻き込まれ捕虜となる。その収容所に二人の米黒人パイロットが入ってくるが、一人が脱走とみなされ射殺される。だがそこには意図的な企みが見られ、収容所内での軍法会議が行われる。
…といういたって地味はストーリーが進んでゆく。しかしさすが「プライベートライアン」後の映画だけあって、ドイツ軍もリアル、収容所も冬の情景もリアル。また黒人兵による戦闘機部隊があったこと、第2次大戦当時はまだ軍隊内でかなり人種差別があったことなど、テーマも新鮮。ただ派手な戦闘シーンといえば、冒頭でP-51が地上掃射するとこと、中盤に収容所上空で空戦がありMe109が撃墜されるとこくらい。
そしてこの映画が罪つくりだったのは、公開時のテレビCMでそのMe109撃墜シーンが使われたことだ。「…こりゃ凄そう!」と劇場に出かけて、肩透かし食らった気分の人も多かったのでは?(2006.10)
 シャーロット・グレイ  CHARLOTTE GRAY   2001年  121分  

監督:ジリアン・アームストロング
キャスト・スタッフ:ケイト・ブランシェット、ビリー・クラダップ、マイケル・ガンボン

戦時下のロンドンで看護婦をしていた女性。フランス語が話せることを買われスパイとなって占領下のフランスへ飛ぶ。出発前に知り合った英空軍パイロットが戦闘で消息不明になり、任務を離れ危険を冒して彼の行方を追う…。

<ネタバレ>

これも女性が主人公の映画としてはありがちなストーリーではある。ただ舞台となるのがヴィシー政権下のフランスというのが珍しい。ドイツ軍だけでなく、フランス警察からも身を隠し行動しなければならない。
派手な戦闘シーンはないが、3号突撃砲が行軍するシーンがある。これが何を元に改造しているのかわからないが、なかなか良くできいる。 (2010/6)

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