西部戦線(’50年代作品)

  総攻撃  BREAKTHROUGH    1950年  91分  ★★

監督:ルイス・セイラー、キャスト:デヴィッド・ブライアン、ジョン・エイガー、フランク・ラヴジョイ
ノルマンディー上陸作戦に備えイギリス本土で訓練を続ける第1歩兵師団。主人公(J・エイガー)は士官学校上がりの実戦経験なき少尉。歴戦の中隊長(D・・ブライアン)とぶつかりながら、何とか部隊をまとめ上陸作戦に臨む。ノルマンディー地方特有の生垣地帯でたくみに待ち伏せ攻撃を仕掛けてくるドイツ軍との戦い…。
1950年と古い作品だが、実写フィルムをうまく使い、ドキュメンタリータッチで内陸侵攻までの過程をていねいに描いた秀作。

<ネタバレ>
イギリスでの訓練から内陸侵攻までよくばって詰め込んではいるが、テンポよく見やすくまとめている。上陸時の戦闘も低予算らしくもうまく描いているし、生垣での小隊単位の戦闘は70年代の映画にも引けをとらない描写で驚く。新米の少尉が経験をつみ中隊長となり、ラストシーンではまた新米の少尉を迎える。勇ましいマーチをバックに兵士たちの行進映像で終わるというお決まりのパターンだが、これだけ古けりゃこれが元祖かもしれないし文句も言えません。

米軍はM4シャーマン、独軍にはおそらくM48パットンを改造した戦車が登場。対戦車砲にバズーカ、歩兵による肉薄攻撃と見せ場も豊富。 (2013/11)
  Die Brucke 1959 西独 白黒 104分  

終戦間際の4月、ドイツ国内。ろくに訓練も受けていない少年兵7人が名もない橋の守りにつく。

<ネタバレ>
前半は普通に学校に行き、女の子とデートをし、父親と喧嘩する10代の少年たちの日常が描かれる。
少年たちやその家族にたっぷり感情移入してしまうので、後半突如現れる米軍が実に不気味。張りぼて作成のM4シャーマン(?)だが、エンジンやキャタピラの音だけ聞こえ、なかなか姿を現さない演出はみごと…プライベートライアンはここをパクッたのではないか。MG42パンツァーファーストMP44などの小道具は充実。無駄死にでは済まされないようなやりきれない結末で、戦争の悲惨さを味わうことができる。ドイツ映画ってすごいよ。(2006.8)



 長い灰色の線 Long Gray Line 1954  138分   

監督:ジョン・フォード、出演:タイロン・パワー、モーリン・オハラ

ウェストポイント士官学校を描いた50年代のアメリカ映画。アイルランド移民の主人公が若い士官たちの指導員として老齢まで勤め上げる充実の生涯。

<ネタバレ>
移民である主人公が給仕の仕事からはじめ、格闘技術を買われ指導員の仕事に就く。まじめな仕事ぶりと人柄を買われ士官たちから慕われるが階級は曹長どまり。WW1からWW2へと時代は移るが戦地へは送られず、ひたすらウェストポイントで若者たちを指導する。戦闘シーンはもちろんなし。学校と自宅のシーンがほとんど。やたらと行進する場面を見せられる。コメディータッチの描写を中心に歌うシーンも多く、ミュージカルの要素も入れた古きよきアメリカ映画。敗北も挫折も知らないアメリカ、強いアメリカ、正義のアメリカを描いたアメリカ万歳映画です。(2014/8)
 激戦ダンケルク DUNKIRK 1958英  モノクロ135分 ★★

監督:レスリー・ノーマン、出演:ジョン・ミルズ、ロバート・アークハート、レイ・ジャクソン、リチャード・アッテンボロー
ドイツ西方電撃戦により包囲下にあったイギリス軍の撤退作戦を、様々な角度から描いた古典的秀作。物語は本隊へ合流するため戦闘を続けながら後退する英軍歩兵部隊が、ダンケルクから民間のボートに乗って英国本土にたどり着くまでが中心。

<ネタバレ>

全編完全装備のイギリス兵を見れるので、英軍ファンには嬉しい。ドイツ軍も適度に強く、戦闘シーンもなかなかリアルで、一人また一人と犠牲者が出てゆく。また英軍総司令部や海軍の活動も描かれ、全体の戦況もよくわかる。撤退作戦のため民間からあらゆる船をかき集める、本土側の有様も描かれ民間人も含めた大イベントだったのだ。海岸にたどり着いても満足な船も無く、繰り返しドイツ軍の空爆を受け大混乱の中での撤退作戦が描かれる。
珍しいブレンガンキャリアーボフォース20mm 対空砲も登場。実写フィルムではJu-878852の他、勢い余ってタイガーTも見れる!モノクロの古典的作品だがオススメの一作。
 脱走四万キロ THE ONE THAT GOT AWAY  1957年英 111分  モノクロ  ★★★  

監督: ロイ・ウォード・ベイカー、出演: ハーディ・クリューガー、 コリン・ゴードン、 マイケル・グッドリーフ、 アレック・マッコーエン
バトル・オブ・ブリテンで撃墜され、イギリス軍の捕虜となったMe109のパイロット。不屈の精神で脱走を成功させる実話に基づいた味わいあるイギリス映画。長らく待たされたがDVD化がやっと実現。

<ネタバレ>
ハーディー・クリューガーといえば、「遠すぎた橋」や「ワイルド・ギース」での独特の存在感でファンも多いはず。(戦争映画以外では「飛べ!フェニックス」)
ゲームのように脱走を楽しむ一面もあり、主人公と英国将校とのやり取りも騎士道精神が感じられむしろ爽やか。終ってみれば一人も死者が出てこないという珍しい戦争映画でもある。イングランドの田園風景、チラッと出てくる英軍の古いトラックやブレンガンキャリアー、飛行場で待機するハリケーンなどもイギリス映画らしい味わい。(2011/3)

 攻撃 Attack!  1956米 白黒 108分 ★★  

ジャック・パランス、エディ・アルバート、リー・マービン
西部戦線のアメリカ陸軍歩兵部隊。無能な指揮官の下で苦労する(…というより死んでゆく)兵士達。
組織の腐敗振りを痛烈に描いた名作。

<ネタバレ>

部下思いのJ・パランスの、およそ主人公(ヒーロー)とは言いがたい強面ぶりも、ここではばっちりはまり役。ドイツ軍も強すぎず弱すぎず、ちょうどいい感じ(?)。ヘルメットがやけに深々として、第1次大戦のドイツ兵みたいだし、重機関銃は昨今の映画のものとは違い文字通り“火を噴いている”し、50年代の古い映画には時々見られるんだけど、異様な迫力あり。
M3(M5)改造らしいドイツ軍戦車が、なんとも不恰好なのが唯一残念。

ジャック・パランス、今年(2006)お亡くなりになりました。合掌!(2008.8)
 撃滅戦車隊3,000粁(キロ) THEY WERE NOT DEVIDED 1956年  102分  

監督:テレンス・ヤング、出演:ラルフ・クラントン、エドワード・アンダーダウン、ヘレン・チェリー
ダンケルク撤退後のイギリス軍がノルマンディー、マーケットガーデン作戦、バルジの戦いと転戦してゆくさまを、戦車部隊を中心に描いた古典的作品。実写フィルムも含めて掘り出し映像が結構あり、イギリス軍ファンにはお薦め。

<ネタバレ>

古い映画なのであちこちで(いらんところで)女性が出てきてまったりするのが余計なんだけどガマン。かも。始めのほうの訓練シーンでは鬼曹長が「世界は二種類しかない、英国と英国の植民地だ!」なんていうんだから楽しい。しかし最後はタイトルどおり、イギリスとアメリカは同盟国である!と訴えるというオチ。マーケットガーデン作戦の米軍空挺隊が、ドイツ降下猟兵みたいな服装だったりするのはご愛嬌。
戦車ではクロムウェルなんかが登場するのも英国製映画ならでは。ともかく中盤からはM4シャーマンがひたすら走り、射撃し、被弾し炎上するシーンが見れる。改造タイガーもチラッと登場する(2008.7)
 あの日あの時 D-DAY THE SIXTH OF JUNE   1955米 106分  

監督:ヘンリー・コスター、製作:チャールズ・ブラケット、原作:ライオネル・シャピロ
脚本:アイヴァン・モファット/ハリー・ブラウン、撮影:リー・ガームス
出演:ダナ・ウィンター、ロバート・テイラー、リチャード・トッド、エモンド・オブライエン
アフリカ戦線従軍中の英軍大佐の恋人が、ノルマンディー上陸作戦のためにイギリスにやって来た妻を持つ米軍将校と恋に陥るという、べたべたな恋愛映画。べたべた。ただラストはちょっと予想外の結末で、ヒロイン中心に見れば以外に感動するかも。女性向の映画かもしれない。

<ネタバレ>

戦闘シーンは最後のほうに上陸作戦があるが、これがまったくのフィクション。米英カナダ混成特殊部隊が、本上陸に先がけて沿岸砲台を奇襲攻撃するというもの。ただ映像のほうは以外な迫力で、50年代の作品とは思えないでき。
ちょっと面白かったのは、デュエップ作戦が取り上げられていて、出撃シーンとボロボロになって帰ってくる港での場面がある。映画て扱われたものとしては、これ以外に私は知らない。あとラブストーリーの外側で米軍将校の上官役のE・オブライエンのぶっ飛んだ行動が爆笑もの!(2009.4)
 地獄の戦線  TO HELL AND BACK  1955年米  106分 ★★

監督:ジェシー・ヒッブス、出演:オーディ・マーフィ 、マーシャル・トンプソン 、チャールズ・ドレイク、デヴィッド・ジャンセン
16歳で入隊し19歳までに数々の手柄を立て、中隊長にまでなった実在の英雄オーディ・マーフィオーディ・マーフィ本人!が演じているというなんか凄い映画。西部戦線を転戦する第3歩兵師団の物語。

<ネタバレ>

1950年代の映画だから、兵士たちの会話、酒場でのけんか、イタリア娘との一夜の恋など、今見るとちょっとなー…なシーンも多いが、戦闘シーンはけっこうな迫力で見入ってしまう。歩兵、戦車、砲兵、さらには空軍の支援などいかにもアメリカ的な戦いぶりはリアル。ドイツ戦車はM-41だが米軍はちゃんとM4シャーマンなのが嬉しい。
最後は主人公が勲章を授与されるシーンで終わる、アメリカ万歳な映画だが、シシリー、イタリア本土、南フランスと転戦していった現存する第3歩兵師団の歴史をたどることができる。(2007.9)
 第十七捕虜収容所 STALAG 17   1953年米 119分 

監督:ビリー・ワイルダー、出演:ウィリアム・ホールデン、ドン・テイラー、オットー・プレミンジャー
監督自らのモノローグが冒頭で入るように、最初の収容所もの映画である(そうだ)。脱走ものの元祖的映画。

<ネタバレ>

全体的にコメディタッチで進むので若干疲れるが、途中から捕虜の中に潜むスパイ探し、最後は脱走劇とけっこう楽しめる。朝礼と点呼、中庭でのスポーツ、男達だけでのクリスマスパーティー、赤十字監視員の視察、何でも手に入れてくる調達屋。収容所ものにはつき物の描写がすべて盛り込まれている、古典的作品。スパイ大作戦のピーターグレイブスが意外な役で出ている。


 戦場 BATTLEGROUND  1949年  118分  ★★  

監督:ウィリアム・A・ウェルマン
出演:ウィリアム・A・ウェルマン、ヴァン・ジョンソン、ジョン・ホディアク、リカルド・モンタルバン、ジョージ・マーフィ
1944年のドイツ軍の大博打、バルジ大作戦で包囲された米軍。その101空挺師団の一小隊を描いた40年代!古典的作品。

<ネタバレ>

いかにも低予算で作ったと思われるできで大掛かりな戦闘シーンはないし、ドイツの戦車軍団も登場しない。しかしながら雪中に孤立した歩兵部隊の物語としては手堅くまとめられており、歩兵同士の撃ち合いシーンなどは60年代に量産された映画に引けをとらない味わいがある。
米兵に化けて潜入するドイツ特殊部隊のエピソード。米軍の士気をくじくためのラジオ放送。本国から届く新聞で自分達の状況を知る兵士達。分捕ったルガーP.08を磨く兵。「ママ、ママ、ママ…」と言いながら絶命する兵。後の映画に影響を与えたと思える様々なエッセンスを見ることができる。
射撃などは一切しないが、珍しいM18ヘルキャットが登場。ラストシーンではM4シャーマンもちょこっと出る。(2009.7)

     総索引